菅直人首相が、「1000万戸の屋根に太陽光パネルを設置することを目指す」と国際舞台で表明した。現状は54万戸程度だ。「1000万戸」は実現可能な数字なのか、それとも「政治主導」で打ち出したパフォーマンスなのか。
菅首相は2011年5月26日(日本時間)、パリであった経済協力開発機構(OECD)設立50周年記念行事で講演した。原発事故を受けたエネルギー政策を語る中で、「設置可能な約1000万戸の家の屋根にすべて太陽光パネルを設置することを目指していく」と日本語で宣言した。
「難しい数字だが、やれないことはない」
菅首相は、太陽光を含む自然エネルギーの比率について、2020年代のできるだけ早い時期に20%を超えるよう取り組むとも話しており、太陽光パネルの話も同様の時間幅をイメージしているようだ。
一方、業界団体の太陽光発電協会の2020年段階の目標戸数は530万戸だ。菅首相が示した目標値は、この倍近い数字だ。
太陽光パネルを一般家庭で導入するには、平均で240万円程度かかる。行政の補助金制度もあり、経済産業省の補助金への申請件数は、2008年度には約2万1000件だったのが、10年度には約19万5000件に急増してはいる。とはいえ、「1000万戸」が大きな数字であることに変わりはない。
太陽光発電協会の岡林義一事務局長は、1000万戸という菅首相の目標設定について、「難しい数字だが、やれないことはない」との見方を示した。ただし、行政のバックアップが相当必要だという前提だ。
「1000万戸目標設定」は、官庁で積み上げた数字なのだろうか。はっきりしない部分もあるが、経済産業省や環境省の複数の部署にきいた範囲では、「われわれが報告を上げた数字ではない」という反応だった。