福島第1原子力発電所の事故を受け、関東各地の下水処理場や浄水施設の汚泥から放射性セシウムが検出されている。多くの県は汚泥を保管しているが、国は放射性物質を含む汚泥の扱いについて全国的な基準を設けておらず、どこも処理に困っている
東京都では、2011年5月10日から12日にかけて都内12か所、全ての下水処理施設を調査。全ての汚泥と汚泥焼却灰から放射性セシウムを検出し、江戸川区の葛西水再生センターでは、焼却灰から最高1キロ当たり2万9100ベクレルを検出した。同センターは汚泥も最高値の1700ベクレルだった。
セメント企業も受け入れストップ
汚泥から比較的高い放射性物質が検出されるのは、雨に含まれた放射性物質が処理過程で濃縮されるためだ。焼却して灰になると更に濃度は高まる。
埼玉県では県内5か所の浄水施設から出た汚泥を6日に採取したところ、全ての施設の汚泥で放射性セシウムが検出された。最も高いところで3900ベクレルだった。
どこの地域でも困っているのが、汚泥をどうするか。国は12日、福島県内で出た下水汚泥について「当面の考え方」を発表。放射性物質が10万ベクレルを超えた汚泥は可能な限り県内で保管。焼却灰は飛散防止のため容器に入れなければならない、などだ。
しかし、これはあくまで福島県についての考え方だ。県内6か所の浄水施設の汚泥から放射性セシウムが検出された群馬県、下水環境課の担当者は「国土交通省に5月中旬に問い合わせたら『福島県の考え方を援用して差し支えない』という返答があったが、群馬は高くても700ベクレルとかのレベル。福島の考え方には低いレベルについて決まりがないので、それでは困る」と話す。
普段はセメントに再利用するためセメント企業に搬出しているが、放射性物質が検出されれば、企業も引き取ってくれない。結局現在、汚泥は民間施設に保管。6月中旬には保管量が限界に達してしまう所もあるという。