新聞部数の落ち込みが続くなか、「1000万部死守」を至上命題としていた読売新聞の部数が、ついに1000万部を割り込んだ。東日本大震災の影響で部数が減少したことが主な理由だ。特に、被災地3県の中で、全国紙の中では比較的シェアの高かった朝日・読売の下げ幅の大きさが目立っている。
日本ABC協会がまとめた2011年4月の月別レポートによると、読売新聞の部数は前月比7万部減の995万部で、1994年4月以来17年ぶりの「1000万部割れ」となった。
朝日新聞は大きく落ち込み770万部
また、10年上半期に「800万部割れ」していた朝日新聞は読売新聞より下げ幅が大きく、同16万部減770万部だった。
紙媒体から電子版への乗り換えが進んでいると指摘されている日経新聞も3万部減らして301万部。だが、毎日・産経は、逆に部数を増やしている。毎日は2万部増の347万部で、産経は4万部増の165万部だった。
この明暗は、全国紙の被災3県(岩手、宮城、福島)のシェアに左右された面もありそうだ。
10年下期の世帯数を発行部数で割った「普及率」の上位3社を見ると、岩手県では岩手日報(41.8%)、読売(11.5%)、朝日(7.5%)。宮城県では河北新報(50.9%)、朝日(9.5%)、読売(8.0%)。福島県では福島民報(40.0%)、福島民友(26.7%)、朝日(9.9%)。3県は、地方紙が圧倒的なシェアを持っているが、全国紙でも朝日・読売の2社は、比較的健闘を見せている。その分、震災の影響も大きかったとの見方もできそうだ。
岩手日報、河北新報、福島民報も部数減
もちろん、地方紙も大きな打撃を受けており、岩手日報が前月比1万部減の19万部、河北新報が3万部減の43万部、福島民報が6万部減の23万部だった。
また、朝日新聞の大幅な部数減には、別の背景もありそうだ。秋山耿太郎社長は2011年1月4日に行われた社内向けの新年祝賀会で、「800万部割れ」の背景を「(販売店の)ASAが抱える過剰予備紙を整理する道を選んだ」と説明。その上で、
「昨年(10年)は西部本社と大阪本社管内のみの部数整理だったが、今年(11年)は他本社への展開も視野に入れて、少しずつ、段階的に進めていく」
とも言明していることから、過剰予備紙の減少が、下げ幅の大きさという形で影を落としている可能性もある。
なお、この「過剰予備紙」は、実際には配られない新聞が販売店に押しつけられているとされる、いわゆる「押し紙」だとの指摘も根強いが、新聞各社は「押し紙」の存在を公式には認めていない。
このことが業績にも反映されたのか、朝日新聞社が5月23日に発表した11年3月期の連結決算では、売上高は前期比0.8%減の4665億3400万円と微減。人件費などの経費削減が奏功し、40億9800万円の営業赤字が105億6700万円の黒字に転じている。