日本初の緊急避妊薬が発売され、その影響に関心が集まっている。これを適切に飲めば、8割の人が妊娠を避けられるというが、乱用も心配されているというのだ。
「売れ行きはまだ分かりませんが、マスコミからの問い合わせは多いですね」
服用には医師の処方箋が必要
緊急避妊薬「ノルレボ錠」を2011年5月24日に発売した反響について、あすか製薬の広報部長は、こう話す。
世界各国で普及している緊急避妊薬は、これまで日本では、国に承認されていなかった。その代わりに、産婦人科などでは、緊急避妊薬としては未承認の中用量ピルが代用されていた。ただ、代用ピルは、効き目はあるものの、月経困難症などで使う強い薬のため、吐き気や頭痛などの重い副作用が伴うデメリットがあった。
これに対し、あすか製薬によると、国の承認薬となったノルレボ錠は、含まれるホルモン量が中用量ピルより少ないため、副作用も少なくて済んでいる。そして、性行為後、72時間以内に服用すれば、約8割の女性が妊娠を阻止できるというのだ。モーニングアフターピルと呼ばれる避妊薬は、ノルレボ錠を指すことが多いという。
その使用は、性犯罪の被害に遭ったり、コンドームが破れて避妊に失敗したりした緊急時が想定されている。結果として、人工妊娠中絶が減る効果も期待されているようだ。服用には、医師の処方箋が必要で、錠剤は1回につき2錠飲む。ただ、保険は効かず、窓口での価格も決まっていない。
乱用も心配、製薬会社は啓発へ
緊急避妊薬のメリットは多いようだが、その乱用も心配されている。薬に頼って、コンドームを使わなくなる可能性が考えられるからだ。
妊娠のすべてを阻止できるわけではないため、薬に頼ることによるトラブルが起きないのか。あすか製薬の広報部長は、この点について、こう説明する。
「避妊のために、日常的に飲む低用量ピルとは違います。あくまで、性行為の事後に、緊急避難的に使うものです。ノルレボ錠を頻繁に飲むと、副作用の症状が強く出るリスクがあります。ですから、医者が多めに出したり、患者さんがたくさんの医者を回って薬をためこんだりすることはあってはいけません。そうならないように、医者や患者さんへの啓発活動をすることにしています」
コンドームを使わなくなって、性病にかかったり、エイズが広がったりする恐れはないのか。
この点については、「10年余り前に避妊用のピルが承認されたときも、同じような危惧が指摘されました。しかし、ピルに頼って、性病やエイズが広がったという話は聞いたことがありません」と反論している。欧米などで、ピルほど緊急避妊薬が使われていないのは、緊急避難的な使用に絞られているからだという。