不払い賃金が半年分ある。残業代や深夜、休日出勤の割増手当が支払われたことがない。同僚との付き合いが悪いことを理由に雇い止めされた――。枚挙に暇がないほど、「ブラック企業」の違法労働が全国にはびこっている。
全国労働組合総連合会(全労連)が行った「全国いっせい労働相談ホットライン」は、相談員228人を配置して148台の電話で労働者の悩みを受け付けた。寄せられた相談件数は、1日で295件にのぼった。
「上司に囲まれ、退職強要」
全労連に寄せられた違法な労働行為と思われる相談件数は、解雇や雇い止め、退職強要、給料や、残業代や休日出勤手当などの不払い、労働条件の不利益変更、パワハラにセクハラなど多岐にわたり、かつ深刻な内容だ。
これまでの、ひどい例ではこんな類がある。
「バスの運転手だったが、『車両のとめ方が納得いかない』と言われ、雇い止めされた」(愛知・男性)
「昨年10月に転籍を通告されて給料5万円を引き下げられた。2月には役職を解かれて5万円下げられ、やむなくそれを飲まざるを得なかった。さらに3月から5万円引き下げると言われ、さすがに『それは受けられない』と返答したら、解雇通告書を突きつけられた」(新潟・男性)
「職場の上司3人から囲まれて退職届を書けと強要された」(新潟・男性)
「12月に解雇予告通知をもらい、1月末に解雇。ハローワークに届いた離職票は『懲戒解雇』になっていた。解雇と同時に住まいからも放り出されている」(愛知・男性)
「お風呂施工のテレホン・アポインターの仕事。研修はあったがマニュアル・トークの読みあわせを3時間やっただけ。先輩から2か月連続でノルマを達成しないと解雇されるといわれたので、がんばろうと思った矢先に即日解雇された。就業規則の解雇規定にも、労働契約書にも書いてなかった」(東京・女性)
露骨に威圧したり、やんわりと脅したり、いちゃもんをつけたりと、理不尽きわまりないヤリ口は「どれをとっても労働法規では違反行為にあたります」(全労連)という。
大手だから「ブラック企業なし」とはいえない
全労連によると、今年は解雇や雇い止めよりも残業代などの未払いの相談が増えたという。さらには、パワハラやセクハラなどのいじめや嫌がらせも増加。「いじめは潜在的なケースが多いので深刻です」と話す。
職場での仲間はずれやいじめによって精神的に追い詰められ、うつ状態に陥るなど病気をきっかけに勤務先を休みがちになって辞めさせられたり、職場復帰しても配置換えや退職勧奨されたりと、企業が辞めざるを得ない状況をつくり出すケースは少なくない。
全労連は「こうした相談自体が氷山の一角でしかありません。むしろ、泣き寝入りしている人や相談する場所がわからない人のほうが多いんです」という。
相談者は製造業や商業・サービス業、建設業などで、中でもそこの中小企業に勤める人が多い。しかし、たとえば中小の製造業は大手企業の下請けが少なくなく、「大手企業の無理な注文に応じるために解雇や(残業代の)未払いが起こっているのが実態です。大手にしても、みなし労働など法の網をうまくかい潜ろうとします。大手だからといってブラック企業ではないとはいえません」と指摘する。