交流サイト「フェイスブック」が国内で浸透しつつあるなか、ビジネス上のつながりに焦点を当てたSNSが注目を集め始めた。米国の「リンクトイン(LinkedIn)」と呼ばれるサービスだ。
登録者は自分の詳細な履歴を公開することで、「職探し」や「人探し」に役立てる。どのような仕組みなのか。
人名、社名、職種から意中の人材を検索
リンクトインは2003年、米カリフォルニア州の「シリコンバレー」で誕生した。現在英語をはじめ6か国語でサービスを提供しているが、日本語はない。
特色は、自己紹介欄に職歴や学歴を重視して入力させる点にある。職歴では現職の会社名や職種だけでなく、過去に務めたことのある会社や当時の肩書きも書き込める。業務内容を具体的に説明する欄も用意されており、電子版の履歴書を作成する感覚だ。一方で、趣味などの直接仕事とは関係ないプロフィルは求められない。この履歴書を基に、他の会員との交流を拡大していくのだが、一般的なSNSとは違ってビジネス上有益な人脈づくりに役立てるのが主眼だ。
フェイスブックなどと同様に、「つながり」をつくるには相手にリクエストを出し、承認される必要がある。3年前からリンクトインを使っている大学教授に話を聞くと、主に海外の学会で知り合った外国人が、後からリクエストを送信してくるケースが多いという。「名刺だけでは分からない相手の職歴や仕事の内容が分かるので、交流を深めるのに便利」だと話す。名刺交換をしただけでは、その後疎遠になることも少なくない。リンクトインでつながっておけば、頻繁にやり取りをしなくとも関係を維持でき、仕事上で力を借りたいときに頼りやすい。
直接の知り合いでなくても、自分が求める人材を検索して探し出すことも可能だ。人名だけでなく会社名や職種からリンクトインの登録者を割り出せるので、「意中の人」が見つかれば仕事の依頼につなげられるかもしれない。
就職・転職先を探す場合にも有効なツールとなる。求人検索で「Tokyo」「IT」と打ち込んでみると、マイクロソフトやアマゾンといった企業の求人情報が表示された。一部サービスは有料になるが、人事担当者に直接問い合わせのメールを送れたりもする。リンクトイン上の履歴書を詳しく更新しておけば、希望する就職先に対するアピール材料になるというわけだ。
日本でマネジャークラスの求人を始める
今日、リンクトインは世界200か国・地域にサービスを広げ、登録者数は1億人を超える。だが日本語をカバーしていないためか、日本での認知度は高いとはいえない。先述の大学教授も、つながりを持っている日本人は「海外経験がある人ばかり」と打ち明ける。
日本市場への本格参戦も、間もなくのようだ。リンクトインは2011年4月20日以降、日本での製品マネジャーやマーケティングマネジャーなどの求人を始めている。また、リンクトイン創業者と長年共に仕事してきたというベンチャーキャピタリストの伊藤穰一氏は、5月8日付のブログでリンクトインが「今年中に日本語版の立ち上げを計画していること……をみんなに伝えたかった」とつづった。一部報道では6月にも日本語サービス開始、と伝えられた。
とはいえ、日本でどこまで利用者数を伸ばせるかは未知数だ。ある日本人女性は、「話のネタ」を見つけるうえで役立っているものの、人脈が広がって新たなビジネスが生まれるという「劇的」な効果までは得られていないと話す。その一方でフェイスブックと使い分けられる点が便利だと評価。「プライベートな友人」とはフェイスブックで交流し、仕事上の話だけにとどめたい相手はリンクトインで、という活用法があるようだ。