武田薬品1兆円超の買収 日本企業のM&Aで歴代3位規模

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   武田薬品工業は2011年5月19日、スイスの製薬大手ナイコメッドを96億ユーロ(約1兆1000億円)で買収すると発表した。交渉が最終段階を迎えているという情報は、約1週間前にブルームバーグが海外で特報し、ニューヨークタイムズ、フィナンシャルタイムズなど有力紙やロイター通信が相次いで追いかけた。日本では日本経済新聞が12日付夕刊で報じたが、海外メディアが先行する形となった。

   今回の武田薬品による外資買収劇は、その資金規模の大きさで注目される。1兆円を超える企業買収は、国内製薬メーカーで過去最大となるのはもちろん、日本企業による外国企業の合併・買収(M&A)としては歴代3位にランクされる。

北米への一極集中が武田の弱み

   調査会社「レコフ」によると、日本企業の外資買収は、日本たばこ産業(JT)の英ガラハー買収(2007年、2兆2530億円)が過去最大で、ソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収(2006年、1兆9172億円)が2位となる。資産価値の高い製薬メーカーの買収は世界的に高額になることが知られているが、武田薬品の場合、自己資金や社債発行で資金調達するというから驚きだ。ソフトバンクがボーダフォン日本法人の買収で多額の有利子負債を抱えたのとは対照的で、国内製薬トップの武田薬品の資金力の大きさを見せつける形となった。

   国内トップの武田薬品だが、世界に目を転じると、売上高は世界13位にとどまる。ナイコメッドは28位で、両社を合わせると世界10位前後に浮上する。武田薬品の2011年3月期の売上高は1兆4193億円。売上高の5割超は海外で、海外市場の9割を北米が占める。

   武田薬品のリスクは北米への一極集中で、ロシア、ブラジルなど、成長著しい新興国市場への進出が課題だった。

ロシア、アジア、中東など新興国に強い会社

   そこで白羽の矢がたったのが、1874年にノルウェーで創業し、現在はスイスに本社を構えるナイコメッドというわけだ。同社は「欧州はもちろん、ロシアやラテンアメリカ、アジア、中東など新興国で強い存在感がある」と、自らアピールしている。米国と日本では提携先を通じて商品を販売する程度で、武田薬品とバッティングせず、市場も商品も補完関係が成り立つという。2010年12月期の売上高は約32億ユーロ(約3700億円)で、武田薬品の4分の1程度。円高のメリットを生かし、外資を安く買収するにはチャンスだったわけだ。

   ナイコメッドは非上場会社で、現在は投資ファンドなどが株式を保有している。このため、最終交渉は武田薬品が提示する買収額にファンド側が応じるか否かにかかっていた。武田薬品のアドバイザーはドイツ銀行が務め、交渉は秘密裏で行われた、武田薬品も最後までノーコメントを貫いた。

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