九州大学が2012年度から実施しようとしていた入学試験への「女性枠」導入に、「男性差別だ」という批判が多数寄せられた。これを受け、大学は2011年5月19日、導入の取りやめを決定した。
「女性枠」は2010年春に発表されたもので、理学部数学科の後期試験で行われる予定だった。
優秀な女子学生の確保目指す
数学科の入学定員54人のうち、9人を後期日程の試験で選抜するが、そのうち5人を「女性枠」とし、残り4人を一般枠とする。国立大学の入試で男女別に枠を導入するのは異例の試みだった。
09年のデータでは、九州大学の女性教員在職率は全体で見ると平均8.7%。しかし、数学分野ではたった3%しかいない。学部ごとの女子学生在籍率も数学科は10.2%と最低ランクだった。
大学はこうした現状について「優秀な女性の人材を育成しなければ、数学分野のみならず社会にとっても損失が大きい」と考え、まず、学部段階から女性の入学者を増やすことにした。2次試験の科目についても一般枠は数学だけなのに対し、女性枠は「グローバル社会において活躍できる人材養成の観点から」英語が追加されている。
しかし、大学側の狙いとは裏腹に「男性差別じゃないか」という意見が電話やメールで予想以上に寄せられたという。
「法の下の平等の観点から疑義」との専門家の指摘
入試課の担当者によると、法の下の平等の観点から疑義があるという指摘が専門家からあったほか、女性枠で入学した学生が「あの人は女性枠で入った」などと言われる精神的負担などを総合的に判断したという。
この結果、12年度入試は従来の一般枠を「一般枠A」とし、女性枠を男女とも受験可能な「一般枠B」として実施することにした。「一般枠B」は以前発表されていた女性枠と試験科目が同じ。女性枠のために勉強してきた学生に配慮した。
ちなみに2011年5月18日から行われているヤフーニュースの意識調査では、九大の「女性枠」について「問題ある」という回答が、19日19時現在、全体の約2万5000票のうち、約1万7000票、67%だった。コメント欄では、
「本当に女性を増やしたいなら大学に入る前、理系文系の進路を決める高校や、どの分野に興味を持つかが決まる中学校から対策をしなきゃならん」
「女性研究者が少ないのは学生の数じゃなくて、女性が研究を続けることのできる社会的基盤がないせい」
といった意見が寄せられていた。