2011年は故・岡本太郎さんの生誕100周年。それに絡めて数々のイベントが開催される中、東京・渋谷にある彼の巨大壁「明日の神話」に福島第1原発を思わせる絵が付け加えられていた。
東京のアーティスト集団「Chim↑Pom(チンポム)」の仕業だったと明らかになり、「天国にいる太郎も喜んでいるはず」「個展直前の売名行為だ」など賛否両論を生んでいる。
「太郎さんなら歓迎するかも」
壁画「明日の神話」は、JR渋谷駅と京王線渋谷駅の連絡通路にある。第五福竜丸が被曝した瞬間をテーマにしたもので、その右下部分の空白に、複数の原子炉建屋から黒煙があがっている様子が「岡本太郎風」に描かれたベニヤ板が付け加えられていた。2011年5月1日に見つかった。
その日のうちに撤去されたこの絵はツイッターで大きく話題となり、「おもしろいイタズラだ」「太郎さんなら歓迎するかも」などの支持の声と「作品への冒涜だ」と批判する声で意見が分かれていた。
岡本太郎記念館の平野暁臣館長は朝日新聞に「繰り返されたら困るが、単なるいたずらではなく、芸術としてやろうとしたのではないか」とコメント。一方、NPO「明日の神話保全継承機構」の担当者は東京新聞に対し「とんでもないいたずらで迷惑している。多くの方が苦しんでいる中で(原発問題と)結びつけられるのは困る」と否定的だった。
そして5月18日になって、チンポムが「自分たちがやった」と認める。絵のタイトルは「LEVEL7 feat.明日の神話」で、「被ばくを扱ったクロニクル(年代記)に原発事故を付け足した。アーティストとして何かしないといけないと考えた」といっている。
チンポムは男女6人組で、渋谷で捕獲したねずみの剥製を黄色く塗って人気キャラクター「ピカチュウ」風に仕上げるなど、過激な創作活動で知られる。08年には広島市上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描いて騒動となり、被爆者らから批判された。
「個展があるのか。ただの宣伝行為じゃねーの?」
事件の真相が分かってからも、賛否両論は続いている。2011年は、「TARO100祭」として回顧展や関連本出版などのイベントが相次ぎ、岡本太郎さんへの注目は没後15年となっても高まり続けている。そんな中で起きたこの事件に、チンポムが名乗り出てからは「売名行為だ」とする声も多い。
「犯人がわからない時は『別にいいんじゃない?』と思ってたけど、アート集団Chim↑Pomの正式コメントを聞くと『あ、ちょっと嫌かも』と思う」
「芸術じゃないよなと思ってしまった」「あ、Chim↑Pomはこの後すぐ自分たちの個展があるのか。じゃあ、あれってただの宣伝行為じゃねーの?www」
チンポムは5月20~25日、個展「REAL TIMES」を都内で開く予定だ。今回の絵の原画や設置の様子を収めた映像など、「3.11以降」をテーマにした作品を展示する。5月12日にYoutubeにアップされた展示会の予告動画には、「明日の神話」と彼らが描いた絵が映っており、ネットでは「チンポムの仕業だったのか」と噂になっていた。