わずか1か月前に史上最高値を記録した「銀」の価格が、瞬く間に暴落した。東京工業品取引所(TOCOM)の銀先物相場は2011年5月18日も、前日比0.1円安の1グラム89.4円と、90円を割り込んだ。130円の最高値を付けた4月25日から40円超も下げている。
そうなると気になるのは「金」だ。銀の高騰は金相場につられて上昇していたが、いまは逆に銀が引き金になって金やプラチナ、原油や穀物といったコモディティの価格が下落基調に転じている。
「買い」が「買い」を呼んで膨らんだ
1オンス50ドルの大台近くまで上昇していたニューヨーク銀先物相場が暴落したのは、日本がゴールデンウイークにあった5月5日。1オンス35.28ドルにまで落ち込んだ。
暴落のきっかけは、米国経済の先行き見通しが悪化し、「工業用需要のウエートが高い銀が先行して売られた」とも、欧州中央銀行(ECB)の6月の再利上げが見送られたことで、「ユーロ安ドル高となり、ドルを借りて商品先物で運用していた投資家が手じまいした」ことで起こった、ともいわれている。
しかし、TOCOMは「それらがきっかけか、といえば本当のところはわかりません。ただ、(価格が)かなり上昇していたので、どこかで『売り』のタイミングを計っていたのではないか」と話している。
銀相場は2011年1月以降、右肩上がりで上昇を続けてきた。もともと銀は工業用需要が全体の46%を占めており、スマートフォンや太陽光発電用、浄化機器として使用されている。実需を背景に伸びてきたが、なかでも中国やインドの新興国需要が旺盛なことから価格上昇が期待され、ヘッジファンドが買いに入るなど勢いづいた。
また、金に比べて割安で投資できるので、貴金属を物色している個人投資家が飛びついたこともある。「買い」が「買い」を呼んで膨らんでいった形だ。