栄村では自噴ストップしてすぐ元通りに
一方、温泉が突然出なくなった場所がある。山形県中央部に位置する大江町の柳川温泉だ。地震の後、源泉の湯がほとんど枯れた状態になったという。量に乏しいうえに黒ずんだ色をしており、とても温泉として使える水質ではない。予約の入らない温泉旅館は「開店休業」に追い込まれ、町では新しい源泉の掘削を視野に入れ始めたが、予期せぬ事態に頭を抱える。
東日本大震災の翌日の3月12日に震度6強の地震に見舞われ、大きな被害を出した長野県栄村の温泉はどうか。村役場に取材すると、地震で土石流が起きるなどしたため源泉を調査できない状態だとしたうえで、「特段の変化は、今のところ報告されていません」という。村内の切明温泉では、地震のすぐ後に自噴がストップしたようだが、すぐに元に戻った。
前出の神奈川県温泉地学研究所では、全国の温泉の異変は「地震による地殻変動がかかわっている」と考える。陸地が数センチ移動して伸縮が起きたことが温泉の水位にも影響を与え、水位が低くなった場所は自噴が止まったり、ポンプによる温泉のくみ上げが困難になったりしたと見られる。ただ、詳しい原因の究明はこれからだと話す。
阪神大震災など過去の大規模地震でも似たような現象が起きたものの、「震源の近くで多少の変化が見られた程度」(神奈川県温泉地学研究所)だった。今回の地震は、広く日本列島全体の地殻に影響が及んだため、震源から離れた地域にある温泉でも異変が生じているようだ。