2009年5月21日にはじまった裁判員制度が2011年で3年目を迎える。だが、今年1月までの裁判員裁判の実施状況では、候補者のうち53%が辞退を認められていた。さらには、裁判員として刑事裁判に参加したくないという人が1年目よりも増えている。
「今年1月までの裁判員裁判の実施状況についての速報版によると、裁判員候補に選定されているにもかかわらず、辞退を認められた人の割合が53.4%であり、過半数を超えている」
江田法務大臣「健全な数字ではないか」
社民党の又市征治参議院議員が5月16日の決算委員会で、このように指摘した。
裁判所が2011年4月に発表した裁判員制度の実施状況についての統計を見ると、2010年に裁判員に選ばれた人は8673人。1事件あたりの平均では、裁判員候補者として約84人が選ばれ、このうち53.0%(約45人)の辞退が認められている。事前の辞退が認められた人を除いた約32人が、裁判所で行われる選任手続きを済ませ、この中から、くじで6人の裁判員が決まる。
又市氏は委員会で、本来は原則として裁判員になることを辞退できない制度の枠組みでありながら、過半数の人が辞退している現状について、柔軟に運用されていることに理解を示しつつも、辞退者が多すぎないか、と質した。
これに対して、江田五月法務大臣は、候補者は選挙人名簿から選んで、辞退する人を除き、裁判所での手続きを経てから、最終的な候補者を決めていると説明した。
「個別の事件の裁判員候補ということで、広く網をかけてお願いしているので、かなりの数の辞退者が出るのは、ある意味で健全なことだ。また、半数近くが現実に裁判員として裁判に加わっていただいている。全体としては、柔軟かつ前倒し的に辞退を認めているので、健全な数字ではないかと思っています」
それでも又市氏は、有権者の半数を超える人が辞退している状況を「裁判員制度が定着しているといえるのか」と疑問を投げかけた。
最高裁判所が2011年1月に実施した意識調査(有権者2050人)では、「裁判員として刑事裁判に参加したい」と「参加してもよい」を合わせると、前の年よりも3.5%減って15.0%。反対に、「あまり参加したくないが、義務なら参加せざるを得ない」と「義務であっても参加したくない」を合わせると、前の年に比べて3.8%増加して84.0%だった。
制度には賛否の意見
この制度には当初から賛否の意見がある。たとえば、制度がはじまって1年後の2010年5月21日、ライブドアのインターネットでの意識調査「(裁判員制度で)日本の刑事裁判は良くなったと思う?」では、「思わない」が56.7%、「思う」が43.3%。裁判員裁判で初の死刑求刑が出た時(2010年10月)、掲示板サイト「gooニュース畑」に寄せられた意見は、制度を「支持しない」が51%、「支持する」が40%、「その他」は9%だった。
「支持しない」という意見には「一般市民は『有罪』か『無罪』かを判断し、量刑はプロの裁判官が判断すべき」「広く、色々な人の意見を取り入れるという観点では賛成だが、裁判員に選ばれた人の精神的負担が大きい」「素人が司法判断をしなければならないのかが全く理解できない」。反対に、「支持する」という意見には「市民感情に近い判決が出ることに期待」「裁判官というのは法律のプロではあっても一般市民の価値観や考え方からは少しズレていることが多々あるから」などとなっている。