大阪府の橋下徹知事は2011年5月17日、国歌斉唱時に起立しない教員の免職処分基準を定めた条例案を9月府議会で審議する方針を示した。
橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」の府議団は、府立学校や政令市を除く市町村立の小中学校を対象に、君が代斉唱時に教員に起立を義務づける条例案を5月議会に提出する予定だが、この中に罰則規定は盛り込まれない。
「国歌を否定するなら公務員を辞めればいい」
大阪府教育委員会は2002年以降、府立学校に対し、教員が入学式や卒業式の国歌斉唱時に起立するよう文書で指示している。政令市を除く府内の公立小中学校教員の処分権は府教委にあるが、職務命令違反に対する処分の指針はない。そのため、処分は府教委の裁量で行われてきた。
これまで府教委では、10年3月に府立高校の教諭4人を、11年5月6日にも女性教諭2人を入学式や卒業式の国歌斉唱時に起立しなかったことから懲戒処分にしている。いずれも最も軽い戒告処分だった。
「国歌、国旗を否定するなら公務員を辞めればいい」
16日にこう発言していた橋下氏は、教員が命令違反を繰り返せば懲戒免職処分となるルールを条例に盛り込むことで、府教委の教員に対する管理を高める狙いだ。
東京都教委では不起立を繰り返した教員に対し、段階的に処分を厳しくしていくケースが多いが、もっとも厳しいものでも停職処分。全国的に見ても、今回橋下氏が示したように、国歌斉唱時の不起立を繰り返せば「クビ」となるルールが検討された例はない。
神奈川県の黒岩知事「強制されて歌うのは愛国ではない」
「ルールを守れと言い続けている教員がこれでは、子どもたちに示しがつかない」
「ルールを守れない教員には厳正に対処する」
府教委の指示に従わない「君が代反対」の教員が絶えない中、橋下氏は以前からの国歌斉唱への強いこだわりを見せてきた。
たとえば2008年の「全国産業教育フェア大阪大会」の開会式挨拶では、数百人の高校生を前に、自らが受けた教育について「戦後教育の中でも最悪。国歌も歌わされたことがない」と批判し、「社会を意識しようと思えば国旗や国歌を意識しなければいけない」と熱弁。大阪府庁の新規採用職員任命式では2010年から君が代斉唱を取り入れ、「日本国家の公務員が国歌をきちんと歌うことは義務」と語っていた。
一方、神奈川県の黒岩祐治知事は17日の定例会見で、「君が代に敬意を払うのは日本人として当然」としたうえで、「強制されて国歌を歌うというのは本当の愛国の気持ちではない」と、批判している。