福島第1原発1号機は、大地震発生の16時間後にはほとんどの燃料が原子炉圧力容器の底に溶けて落ちる、いわゆるメルトダウンの状態にあったことが分かった。2、3号機もメルトダウンの可能性が強まっており、1、2、3号とも、考えられていたより深刻な危機に直面していたといえそうだ。
ただ現在、1号機の冷却は順調で、東電は6~9か月で原子炉を冷温状態にするという期限は維持する方針だ。一方、3号機の圧力容器温度は不安定な状況が続いている。
燃料が溶け落ちて「結果的に」冷却できた
東電は今回、福島第1原発が地震発生から45分後の大津波で全電源を喪失し、冷却機能を失ったと仮定して、1号機内のデータを分析した。その結果によると、冷却が止まった直後から圧力容器内の水位が急激に低下し、地震発生から3時間後には燃料の露出が始まった。
そこから炉内の温度は急上昇。発生5時間後には燃料棒の損傷が始まり、容器の底に溶け落ち始めた。16時間後の3月12日午前6時50分頃には大部分の燃料が圧力容器底部に溶け落ちたという。
東電は地震翌日の12日午前5時50分に炉心へ真水を注入し始めたが、落ちた燃料で容器に穴が空き、水位は低いままだった。それでも燃料が下部に落ちたため炉心の温度は結果的に下がったとしている。
燃料は現在、大半が容器下部で水没しているものの、圧力容器周りの温度などから一部露出している可能性がある。東電は、冷却水漏れはあるものの圧力容器の大規模な破損はないとし、注水によって燃料が安定して冷却できていると説明している。
今回の解析が正しければ、燃料が溶け始めてから注水作業を始めるまで約10時間、空だきの状態が続いた。これまでの発表では、燃料は約55%だけ損傷しているとされており、東電は2か月も溶融を把握できていなかったことになる。
細野首相補佐官「心配なのは3号機」
東電は5月17日、原発事故収束の改定工程表を発表する。これについて、菅首相は5月16日の衆院予算委員会で、「半年から9か月後に冷温停止になるという状況に対して、なんとか時間的な展望は変えないで進めることができるのではないか」と発言。東電の清水正孝社長も、「安定な冷却が保たれている」と強調したうえで、日程を維持する考えを示した。
また、1号機の建屋地下では大量の汚染水が確認されている。このことから、細野首相補佐官は5月15日に出演したNHK「日曜討論」で、冷温停止までの期限は堅持する方針を示したうえで、格納容器を水で満たす冠水方式を見直す考えを明らかにした。さらに、
「(1号機は)ある程度きっちり冷えているということを考えれば、状況自体は比較的安定していると見ている。むしろ心配なのは3号機。必ずしも順調に冷えていない。3号機にどう対応するかが、私の頭の中で比重を占めている」
と語った。
3号機は5月上旬から圧力容器の温度が上昇しており、東電は注水量を増やして対応しているところだ。また、東電は2、3号機でも炉心溶融の可能性があるとして解析を進めている。