東日本大震災の影響で数十万人いた在日中国人労働者の帰国が相次いだが、震災から2か月が経過し、再び日本で働く「出戻り」が増えている。ただし、飲食店などのアルバイト接客業が今のところ中心になっているようだ。
横浜中華街でも4月末から「帰国」
牛丼チェーンの吉野家によると、震災後一週間で、首都圏で働く約200人の中国人アルバイトが辞めた。これは外国人アルバイトの25%にあたる。人手が足りなくなった店舗に近隣店舗から応援を派遣、店長を長時間勤務させるなどして急場を凌いだ。そして国籍を問わず新規のアルバイト採用を急いだ。
ただ、2011年4月末になると、辞めていった200人の中の一部が「アルバイトで戻りたい」と申し出るケースが現れたという。戻すかどうかは店長との面接で決めている。
横浜中華街では、ここで働く中国人約2500人のうち300人が帰国。その影響で10店舗ほどが営業できなくなってしまった。ここも、4月末ごろから帰国した中国人が戻ってきた。横浜中華街発展会協同組合は、
「震災前と同じとはいえないが、従業員が帰ってきてお客も帰ってきた。この賑わいをぜひ見て欲しい」
と胸を張る。
都内の中国人が経営するマッサージ店は震災3日後に店を閉じ、オーナーや従業員数人が帰国した。営業を再開したのはそれから1月半後。
「原発事故は恐いけれども、やっとのことで日本にオープンした店をそのまま閉店させておくことはできない」
と同店オーナーは話した。
研修生は一度帰国したら再入国困難
中央大学には中国人留学生が約400人いる。その殆どが震災後に帰国したが、
「新学期始まりからゴールデンウィークにかけ大多数が大学に戻っている」
と同大学広報は話す。
もっとも、中国人が日本に戻ってきたのは、日本は安全だと確認できたから、というわけではないようだ。多くの人は日本に生活基盤があり、日本を離れて生活することが難しいからだ。仕事や勉強を中途半端に辞めることはできない、という人もいる。しかし、中国人労働力がすべて戻ってくるのかというと、
「絶対日本には戻らない、と言っている人や、絶対日本には出さないと言っている親が多いため、急には増えないだろう」
と先のマッサージ店オーナーは見ている。
ただ、工場労働者は事情が少し違うようだ。日本繊維産業連盟は、戻っている中国人はアルバイトや学生が主で、研修生は話が別、と打ち明ける。繊維業界では数万人規模の研修生を受け入れているが、3万人が帰ったままだ。
「研修生は日中両国で取り決めた制度によって成り立っているため、一度帰国したら再入国して仕事に就くことは困難。国内で従業員を募集しても来てもらえるかどうか。人手不足は当面続きそうだ」
と悩みを漏らす。