株式投資で短期売買を繰り返す個人投資家、いわゆるデイトレーダーの投資環境が悪化してきた。原因は株式の売買注文の処理がスピードアップされて、ヘッジファンドなどの大口投資家によるアルゴリズムなどを駆使したコンピューター取引が売買の「主流」となったことにあるとみられている。
東京証券取引所は2010年1月に新たな売買システム「アローヘッド」を導入。売買注文の処理を、それまでの100倍というスピードで約定する「高速化」を実現した。それにより、コンピューターが人を上回る速さで取引を成立させてしまい、デイトレーダーが売買する機会を逸してしまっているというわけだ。
コンピューターが先回りして「約定」
いまや個人投資家の株式投資の大半はインターネット売買。売買手数料も安く、パソコンの画面を見ながら簡単に売買注文できるので、プロ顔負けのデイトレーダーを生み出した。
ところが、東証が新たな売買システムを導入した1年ほど前から、デイトレーダーが思うように収益を上げられなくなった。
これまでデイトレーダーは板情報(売買の注文情報)を頼りに、取引板に売り注文が出るのをみてから買い注文を入れていた。売るときには、買った株価に売買手数料を上乗せしてから儲かる価格が付くと、機敏に「売り」注文を入れる。
それが東証の約定スピードが速くなったことで、デイトレーダーが買おうと思ったときに売り注文がないという事態が起こるようになった。アルゴリズム取引などのコンピューターのプログラムで小刻みに自動に注文を入れるシステム売買が、デイトレーダーよりも先回りして約定してしまうためだ。
システムによる、いわば「超」短期売買によって、デイトレーダーは買いたいときに買えず、売りたいときに売れないのだから、嫌気がさしてくるのもわからないではない。