電気料金値上げどこまで容認 東電賠償枠組み決着後の焦点

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   東京電力福島第1原子力発電所の事故の被害者に対する損害賠償の枠組みが、2011年5月13日の閣議で正式に決まった。賠償の着実な遂行と電力安定供給の確保という2つの命題の両立を大義名分に、東電の経営を破綻させず、国の財政負担も極力回避しようとするものだ。

   東電が求めた賠償総額に上限設定を求める案は退けられたが、数兆円に上ると見込まれる賠償を東電が自力で負担し切れるかは疑問で、最終的に電気料金にしわ寄せが及ぶとの見方が強い。

   枠組みは、東電以外の電力会社を含む官民が資金を拠出する「原発賠償機構(仮称)」を創設。賠償資金は、国が付与する数兆円規模の交付国債(いつでも換金可能)を換金するほか、電力各社が計年間3000億円程度の負担金を払う。

火力発電シフトだけで電気料金16%引き上げ?

   東電は機構が出した賠償資金を利益の範囲内(年間1000億~2000億円)で長期にわたって返済する。返済期間は10年以上と見込まれ、機構は一定期間、東電を公的管理下に置いてリストラや資産売却を徹底させる。機構は東電の優先株を引き受けるなど資本注入も実施。東電は有価証券や不動産などの処分で5000億~8000億円を捻出するほか、株主への配当も10年程度は見送る。

   最大の焦点は、東電の負担に上限を設けるか、それと絡んでどこまでリストラを徹底するか、だった。東電は「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」が起きた場合、電力会社の賠償を免除するという原子力損害賠償法の条文を論拠に、弁護士らによる理論武装に励み、「賠償負担総額に上限を設けてほしい」(勝俣恒久会長)と強気だった。

   政府側は、東電と関係が深いとされる与謝野馨経済財政担当相が、同条文に最後までこだわったというが、「国民の負担を膨らませるのは許されない」との官邸の意向で、上限設定に反対。東電側に「債務超過で破綻になってもいいのか」と強く働きかけた結果、8日ごろに、東電側が折れたという。「民主党に政権交代して自民党時代とは違うこと、また世論の厳しさへの認識不足」(与党関係者)が東電の命取りになったようだ。

   枠組みがひとまず固まったとはいえ、問題は多い。まず、電気料金アップだ。東電は賠償以外にも、福島第1原発事故の収束に向けた支出、火力発電への切り替えに伴う燃料費の増加(2011年度だけで約1兆円見込み)などがかさむ。年度内に計7500億円の社債償還と借入金返済もあり、「火力発電へのシフトによる燃料費の増加で電気料金を16%引き上げる必要がある」と試算される。政府が燃料費増加分の電気料金転嫁をどこまで容認するかが焦点だ。

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