東日本大震災後の影響で液状化現象を起こした東京湾岸エリアに代わって、武蔵野にあたる東京・立川市や国立市、国分寺市、埼玉県新座市などの東京・多摩地域周辺の住宅地が注目を集めはじめた。ロケーションがよいといわれた海沿いは埋立地なので、そこよりも地盤がしっかりした地域を選びたいということらしい。
また、マンションであれば、高層階より低層階。停電に弱いオール電化住宅が敬遠され、歩いて帰れるように職場との「距離」も近いほうがいいなど、震災時の「生活」を想定した住まい探しが広がっている。
「もとはどんな土地だったか」を気にする
2011年3月11日の東日本大震災から、まもなく2か月。震災を機に、住宅選びの着眼点は大きく変わったようだ。ある大手不動産の関係者は「住宅の耐震性はもちろんだが、もとはどんな土地だったか、気にする人が増えた」という。内陸部でも、むかし沼や田んぼであっては地震が起こった際に液状化現象を引き起こす可能性が高い。
今回の震災でいえば、たとえば千葉県我孫子市や埼玉県久喜市などがその例だ。「同じ我孫子市内でも利根川に近い地域では液状化現象が激しかった」(我孫子市内のマンションの住人)。東京湾岸エリアを含め、液状化現象が深刻な地域は道路が陥没したり、家屋が傾いたり、ライフラインの復旧の遅れたりと、住民が震災前のように暮らすにはなお時間がかかりそうだ。
震災後の湾岸エリアの物件について、住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏は意外にも、「今ならやすく買えるだろうという読みから、買い注文は増えています」という。
しかし、売り手がほとんどいない。「今売れば、安く買い叩かれるのが明白なので売る気にならないといったところでしょう。そのため、中古市場は取引が成立しづらくなっています」と説明する。
湾岸エリアの住人らに、「安くても売りたい」「引越したい」という声がないわけではないが、「安くない買い物」だっただけに踏ん切りがつかないようだ。