電力不足が予想される夏の東京電力エリアでは、節電のためにオフィスの冷房温度が軒並み引き上げられそうだ。サラリーマンの対応策の一つは、今や定着したクールビズ。政府が例年6月~9月のクールビズ期間を、2011年は5月~10月に2カ月拡大したこともあり、民間でも大型連休明けから導入する企業が多く、「節電需要」をあてこんだクールビズ商戦が早くも熱い。
そごう・西武グループは例年より約1カ月早い4月中旬から順次、クールビズ関連コーナーを設けた。このうち、西武池袋本店は、4月22日にスタート。半袖シャツといった定番のほか、東京証券取引所が着用を認めたポロシャツも人気。
男性用半袖シャツの扱いを5割増
また、ポロシャツに使われる生地で仕立てたワイシャツも、通気性がよいことなどから引き合いが強いという。同店はクールビズ関連衣料で昨年比5割増を目指す。
そごう横浜店はさらに早い4月15日から関連売り場を展開している。吸水性や防臭機能を強化した肌着のラインアップを10年より2割増やし、反応は上々という。
大丸東京店は5月11日に専用売り場を設け、男性用の半袖シャツの扱いを5割増やす。ジャケットやズボンも通気性をよくしたものを前面に出し、暑い夏に立ち向かうサラリーマンを応援する。高島屋の日本橋店では汗をよく吸収するステテコが人気を呼んでいる。
スーパーやユニクロはやはり、百貨店に比べると、より肌着に力を入れている。イオンは4月、肌着や寝具のブランド「トップバリュ クーリッシュファクト」を立ち上げた。男女を問わず肌着や靴下などの商品ラインアップは2010年の2倍以上に増やした。汗のにおいの元となる菌の増殖を抑制する「抗菌防臭」加工が売り。東電エリアだけでなく、全国のイオンやダイエー、マックスバリュなど約900店で販売する。
ユニクロは汗を吸ってすぐ乾く機能を強化した肌着「サラファイン」「シルキードライ」を全国で前面に出す。11年は昨年比倍増の3600万枚の販売を目指す。
百貨店や紳士服専門店には痛しかゆし
クールビズは小泉政権時代の2005年、小池百合子環境相が提案。当初はだらしない感じのおじさんも目立ったが、ノーネクタイでも首もとに白い肌着が見えない「Vネック」型肌着も定着するなど、年を追うごとにこなれてきている。
もともとの目的は二酸化炭素(CO2)排出量を削減して地球温暖化を食い止めるため、冷房を28度に設定し省エネを励行しようとの狙いだった。しかし今年はCO2排出がほとんどない東電の福島第1、第2原発が使えない半面、CO2出しまくる火力発電が全開で、地球温暖化対策という本来の趣旨より、電力不足対策という緊急対応が前面に出る。
一方、小売業界、特に百貨店や紳士服専門店には痛しかゆしだ。事実上、1年の半分(5~10月)がクールビズになることで、半袖シャツやポロシャツが売れたとしても、スーツよりかなり単価が低いことに「頭を抱えている」(百貨店大手)。利幅の大きいネクタイも年に半分しか使われなければ、各方面に打撃を与えそうだ。