「もんじゅ」大いなる不安 トラブル続出に機器落下引き上げ

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   機器落下事故の復旧作業が長期化している日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が、落下した機器の引き上げに踏み切ることになった。原子力機構では、事前に復旧作業手順を訓練するなど万全を期したい考えだ。

   だが、ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使用してさらに核燃料を作り出す「核燃料サイクル」を実現するためには、軽水炉を利用した通常の原発と比べて、技術的な困難も多い。その上、機器の引き上げ自体が本体の損傷を招き、重大事態に発展しかねないのでは、という不安まで生じている。

制御棒の操作が一時中断するというトラブル

   もんじゅをはじめとする高速増殖炉で冷却剤に使用しているナトリウムは、仮に水分と反応すると爆発するという性質を持つため、これまでも危険性を指摘する声が相次いでいた。1985年には、周辺住民が原子炉の設置許可の無効確認を求めて行政訴訟を起こし、03年の名古屋高裁の判決では原告が勝訴してもいる(05年の最高裁判決では国が勝訴)。

   1995年には温度計の設計ミスでナトリウム漏れが起こり、火災が発生。これが原因で、約14年5か月にわたって運転停止を余儀なくされた。2010年5月に運転再開を果たしても、直後からトラブルが続出した。運転再開初日の5月6日から、放射性物資ル検知機の誤差動が相次いだ上、周辺自治体への報告が遅れたとして批判を浴びた。さらに、5月10日には、作業手順を作業員が把握していなかったことが原因で、制御棒の操作が一時中断するというトラブルもあった。

   中でも、とりわけ復旧に手間取っているのが、10年8月26日のトラブルだ。核燃料を交換する際に使用した「炉内中継装置」(ステンレス製、長さ12メートル、直径55センチ、重さ3.3トン)を原子炉内で取り上げる作業を進めていたが、2メートル引き上げた時点で原子炉容器内に落下した。この状態では燃料棒の交換はできず、この問題を解決しない限りは、運転再開も廃炉もできない。その間、ナトリウムで冷却を続けなければならない。

   10月13日にも炉内中継装置の引き上げを試みたが、約2メートル引き上げた時点で過重超過になり、やはり引き上げを断念。その後も20回以上、引き上げ作業に失敗している。

作業中に地震が起きた場合は作業を中断

   このため、中継装置だけを引き上げることは断念。炉の上ぶたを一部撤去した上で、炉内中継装置の外側にある「燃料出入孔スリーブ」と呼ばれる備品ごと引き上げるという方針が決まっている。なお、このスリープは、構造上は引き上げることは可能だとされるが、設計時は引き上げることは想定されていない。原子炉容器内のナトリウムの扱いにも細心の注意を払う必要があり、大規模な復旧作業を余儀なくされている。

   このような状況に、悲観的な見通しを示すネット利用者も多い。例えば、「Yahoo!知恵袋」では、

「いずれ液体ナトリウムの循環配管に異常が見つかり、それでも修理できないで・・・・。つまり、分解・取出しが成功しないと関西圏は時間未定のとんでもない時限爆弾を抱えることになるのです。もちろん分解・取り出し作業が失敗して、その場で過酷事故になる可能性もあります」

という答えが「ベストアンサー」に選ばれている。

   原子力機構は、メーカーの工場で回収用の装置を製造。作業手順を確認するなど、作業員のトレーニングも進んでいる。

   これを受けて、外部有識者でつくる検討委員会が11年5月10日開かれ、「技術的条件が整った」として引き上げ作業の開始を了承。作業中に地震が起きた場合は作業を中断すること等も確認した。原子力機構は、6月にも引き上げ作業を始めたい考えだ。

   引き上げ作業が完了し、炉心中継装置が復旧したことを前提に、11年度中に第2段階の性能試験にあたる「40%出力試験」を目指している。

   だが、福島第1原発の事故で地元の不安感は、これまでよりも大きく、福井県の西川一誠知事や敦賀市の河瀬一治市長は、新たな津波や地震への対策を求めており、運転再開までにはさらに時間がかかる可能性もある。

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