東電の「尾瀬」売却が浮上 代わりに誰が自然守るのか

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   尾瀬の湿原地帯などを東京電力が売却する可能性が浮上してきている。原発事故の補償金ねん出を迫られているためだ。売却しないとしても、自然保護にかかる年2億円もの費用をどうするのか。

   東電は、尾瀬国立公園の約4割に当たる土地の所有者だ。世界的に有名な湿原の尾瀬ヶ原や尾瀬沼といった特別保護地区については、約7割も占める。

年2億円の保全費用を出せない可能性も?

またこうならないのか
またこうならないのか

   それは、かつて尾瀬原ダムと呼ばれた大規模な水力発電計画があったからだ。自然保護運動が高まる中、計画は消滅し、東電は現在、毎年約2億円をかけて湿原にある木道の管理などの保全活動をしている。

   ところが、原発事故の余波で、その尾瀬すらも売却対象の1つに浮上と報じられている。もし売却されれば、どのようにして自然を守るのかが焦点になる。

   東電所有地のある群馬県の大澤正明知事は、2011年5月11日の会見で、「尾瀬のような自然をもっと大事にしていくべきだ」と強調。売却については、「絶対に阻止したい」との考えを示した。

   県の尾瀬保全推進室では、東電が所有地を売却するかについて、「新聞報道でも、『売却は考えていない』とコメントが出ていますし、こちらも特に聞いていません」とする。こうした状況から、県が所有地を買うという話も出ていないという。また、年2億円の保全費用を出せない可能性についても、聞いていないとしている。

   東電側は、報道のように、所有地の売却は考えていないのか。

   広報部の担当者は、取材に対し、それはあくまで現時点のことであることを明らかにした。そして、今後の資産処分計画の中で売却が決まる可能性について、「まったくないとはお答えできません。今後のことは、まだ何も決まっていませんので」と言っている。

「国が買うか、入山料を取ればいい」

   ただ、現時点で売却を考えていない理由として、東電広報部では、尾瀬が利根川最上流の水源地であり、下流の水力発電所に欠かせない事業用資産であることを挙げている。

   売却しないとしても、毎年2億円の保全費用をねん出できるのか。この点については、資産処分計画を考えている最中で、まだ見通しを示せないと答えるのみだった。

   地元の自然保護関係者の間では、尾瀬の行方について、不安が広がっている。

   各種啓発活動をしている尾瀬保護財団では、「今のところ、東電から具体的な話は聞いていませんが、今後どうなるのか懸念があり、状況を見守っています」(企画課長)と話す。

   また、NPO法人の尾瀬自然保護ネットワークでは、売却の可能性があることが心配だと言う。売却先が民間なら、尾瀬を観光資源と考えて収益中心に考える恐れがあるからだとする。円谷光行・本部事務次長は、「一番いいのは、国が買うことだと思います。アメリカなどではそうですし、土地を管理したり人を指導したりしやすいからです」と話す。

   保全費用については、入山料を取ることも考えていいと言う。かつて入山者増加から議論になったことがあるが、円谷さんは、「そもそも管理にコストはかかるものですし、それでマナーがよくなることが考えられるからです」とする。

   なお、尾瀬が、再び水力発電など事業用に使われることについては、群馬県などの関係者は、国立公園で国の許可が必要なことから可能性は低いと見ている。円谷さんも、「ダムはありえないですし、発電などの事業は望ましくありません。尾瀬は、自然保護運動の発祥地ですし、日本に1か所ぐらい本当の自然があってもいいはずです」と話している。

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