「国が買うか、入山料を取ればいい」
ただ、現時点で売却を考えていない理由として、東電広報部では、尾瀬が利根川最上流の水源地であり、下流の水力発電所に欠かせない事業用資産であることを挙げている。
売却しないとしても、毎年2億円の保全費用をねん出できるのか。この点については、資産処分計画を考えている最中で、まだ見通しを示せないと答えるのみだった。
地元の自然保護関係者の間では、尾瀬の行方について、不安が広がっている。
各種啓発活動をしている尾瀬保護財団では、「今のところ、東電から具体的な話は聞いていませんが、今後どうなるのか懸念があり、状況を見守っています」(企画課長)と話す。
また、NPO法人の尾瀬自然保護ネットワークでは、売却の可能性があることが心配だと言う。売却先が民間なら、尾瀬を観光資源と考えて収益中心に考える恐れがあるからだとする。円谷光行・本部事務次長は、「一番いいのは、国が買うことだと思います。アメリカなどではそうですし、土地を管理したり人を指導したりしやすいからです」と話す。
保全費用については、入山料を取ることも考えていいと言う。かつて入山者増加から議論になったことがあるが、円谷さんは、「そもそも管理にコストはかかるものですし、それでマナーがよくなることが考えられるからです」とする。
なお、尾瀬が、再び水力発電など事業用に使われることについては、群馬県などの関係者は、国立公園で国の許可が必要なことから可能性は低いと見ている。円谷さんも、「ダムはありえないですし、発電などの事業は望ましくありません。尾瀬は、自然保護運動の発祥地ですし、日本に1か所ぐらい本当の自然があってもいいはずです」と話している。