東京電力への政府の賠償支援策がまとまったが、「東電はこのまま上場を維持していいのか」との声が漏れはじめている。東証の基準では、債務超過(1年猶予あり)の場合や、監査法人による監査報告書で「不適正」あるいは「意見を表明しない」とした場合、上場が廃止されてしまうからだ。
東電株の2011年5月13日の終値は前日比26円安の453円と、500円を割り込んでいる。個人や企業のほか、年金基金や確定拠出年金などを運用するファンドにも組み入れられているだけに、上場廃止となれば影響は計り知れない。
補償額4兆円超えると債務超過の可能性
東京電力は、「予定どおり、5月20日に決算発表は行います」としている。しかし、政府の賠償支援策には「賠償総額に事前の上限を設けない」とあり、原発事故が収束しない限り、損害賠償の補償額がどこまで膨らむかわからないのに決算できるのか、疑問だ。
また、そのような決算を東電の監査法人である新日本有限責任監査法人が承認するのだろうか。
東証が債務超過に陥っている可能性は低くない。東電の純資産は2010年3月期で2兆5164億円。補償総額の半分を東電が支払うのだから、総額が4兆円を超えると資産はかつかつになる。
加えて、2011年3月期決算が組めそうにないうえ、今期の有利子負債の返済に7500億円、原発事故に伴う火力発電への切り替えの燃料費に約1兆円。この分の運転資金は3月に大手銀行から2兆円を融資してもらった。
しかし今後は信用力の低下で社債は発行できないし、銀行からの融資も「返済の当てもない融資先」に、政府保証でも付かないと、もう貸せるはずがない。外部からの資金調達はほぼ絶望的だ。
これだけでも首が回らないのに、さらには原発を廃炉にする費用も数兆円とかかるというのだから、監査法人から事業の継続性で「NO」を突きつけられてもおかしくない。