福島第一原子力発電所の放射線漏れ事故の被害に対する損害賠償問題にからみ、大規模なリストラ策が求められている東京電力。先に最大50%の役員報酬のカットや保有する不動産の売却などの合理化方針が発表したが、政府から努力不足を指摘され、なお削減可能なところを探している。
「まだ甘い」――。そう思っているのは政府だけではない。数兆円ともいわれる賠償金の支払いで国の支援を受け、さらには原発停止に伴う火力発電用の燃料費の上昇分を電気料金に転嫁するというのだから、注がれる目が厳しくなるのは当然だろう。
代表取締役8人の役員報酬を5月から返上
東電の清水正孝社長は2011年5月10日、原発事故の補償問題で政府の支援を要請した。その後、記者団に対して清水社長は「聖域なき合理化に取り組む」と、リストラ努力を強調した。
しかし、現在決定していることは、代表取締役8人の役員報酬を5月から返上することと常務取締役60%、管理職25%、一般社員20%の給与カットと、2012年度の新卒採用の見送りだけだ。
人員削減は退職による自然減(約1000人)を見込んでいるにすぎず、「経営側からの提案は何もありません」(東京電力労働組合)という。また、資産売却も一部で4000億~5000億円を売却すると報じられたものの、「決定している事実は何もない」(東電広報部)。
そうしたなか、東電のリストラ策が「甘い」との声は至るところから聞かれる。なかでも「20%の給与カットでも高い」と、やっかみもあるのだろうが「高給」に対する指摘は少なくない。
国税庁の民間給与実態統計調査(パートなどを含む)によると、給与所得者の平均給与は406万円(2009年)。業界ごとでみると、電気・ガスは「高給」といわれる金融業や情報通信業などを抑えて第1位の630万円。しかも東電の平均年収は650万円(11年実績、組合員の平均)と高く、20%カットしても製造業(444万円)や卸売・小売業(353万円)などを凌ぐのだ。