福島第1原発3号機の原子炉圧力容器の温度が上昇傾向を続けている。注水の一部が原子炉内に届いてないと見られ、注水配管の切り替え工事も始まった。同圧力容器は「設計温度300度」とされているが、原子炉の場所によっては300度を超える数値も出ている。東京電力は「余裕をもって定めた上限なので現状は問題ないものの、注視していく」と説明している。
東京電力は2011年5月10日、3号機の注水配管を切り替える工事を始めた。配管切り替えを発表した7日の会見では、圧力容器の下部温度が、安定していた4月下旬から40度近く高くなり、7日5時現在149.6度だったことが明かされた。7日配信の日本経済新聞記事は、3号機圧力容器の下部温度を伝えた上で「設計上の上限は300度程度だが注意が必要だという」と指摘している。
1週間強で230度以上も上昇
圧力容器の温度については、下部温度だけでなく数か所の温度が公表されている。例えば、東京電力や経済産業省の原子力安全・保安院が連日発表している「プラント関連パラメータ」には、下部温度と「給水ノズル温度」が記載されている。マスコミ各社の報道も同2か所のいずれか、もしくは両方の数字が紹介されることが多いようだ。
3号機の温度関連で最も高い数値を現在見せているのは、「胴フランジ」部分だ。圧力容器上部の本体と上ぶたの接続部分で、5月7日11時には300度を超えた。以降も微増を続け、9日11時現在では333.9度。3日連続で300度超の状態が続いている。1日5時現在では99.6度だったため、1週間強で230度以上も上昇したことになる。もっとも、東電は発表資料で「正しく測定されていない可能性のある計測器も存在している」としている。
3号機の一部で「設計上の上限300度」を超えたことで、インターネットのツイッターや2ちゃんねるでは、「マジか」「涙目」「大丈夫なのか」などと取り上げる人が少なからず見受けられた。
12日にも冷却注水配管切り替え
計器不良の可能性があるとはいえ、「胴フランジ」の300度超えについて、東電はどう考えているのか。東電によると、「設計温度302度」は余裕をもって設定した上限で、「それを超えないよう運用していこうというもの」だという。また、圧力容器の温度を判断するには、胴フランジなど1部だけでなく全体的な数値を総合する必要があるとしている。原子力安全・保安院も同様の見解を示している。
しかも、圧力容器が損傷するような影響が出るのは、温度だけでなく圧力も関係するそうだ。東電は、圧力容器の温度が400度で、かつ現行の93倍以上の圧力がかかる状態が同時に起きれば損傷につながるが、現状では温度も圧力も余裕がかなりあると説明した。
事故直後の3月19日には、3号機の圧力容器下部温度は352度に達したこともある。3号機の冷却注水配管切り替えは、順調にいけば5月12日にも実行される予定だ。