商都・大阪の表玄関、JR大阪駅が2011年5月4日、5代目の駅舎にリニューアルし、周辺はちょっとした再開発ブームに沸いている。JR大阪駅は1日約85万人が利用する西日本最大のターミナルで、言うまでもなく大阪キタの中心。交通アクセスの良さを武器に、新たに誕生した高層の駅ビルには「JR大阪三越伊勢丹」が大阪に初めて進出。周辺は阪急、阪神、大丸の3百貨店の牙城だけに、いずれも増床や改装で三越伊勢丹を迎え撃つ。
2012年に阪急百貨店梅田本店の増床工事が完成すれば、4店を合わせた売り場面積は約25万平方メートルとなり、日本一の百貨店集積地、東京・新宿駅周辺を上回るというから、大阪の百貨店競争の過熱ぶりがわかる。
南北の駅ビルが乗降客を奪い合う
JR大阪駅は1874年に旧国鉄駅として開業。戦後の変遷を経て、前身の4代目は1979年に開業し、百貨店やホテルが入居する駅ビル「アクティ大阪」が1983年にオープンした。5代目となる今回は、駅南のアクティ大阪を増築して「サウスゲートビルディング」と改称。駅北にはJR大阪三越伊勢丹などが入居する高層の新駅ビル「ノースゲートビルディング」が開業した。南北の駅ビルを斬新なデザインの橋上駅舎で結び、全体を「大阪ステーションシティ」の愛称で呼ぶことになった。
ホームをまたぐ橋上駅舎は地上3階にあり、ホームとつながる新たな改札「連絡橋口」も設置。サウスゲートビルディングには従来からの大丸梅田店に加え、大阪最大の東急ハンズが新規出店。ノースゲートビルディングにはJR大阪三越伊勢丹のほか、約200店舗が入居し、南北の駅ビルが乗降客を奪い合うライバルとなった。
サウスゲートビルディング(旧アクティ大阪)に入居する大丸梅田店は、ライバルに対抗するため2008年から増床工事を始め、ひと足早く4月19日に全館オープンした。周辺では一番乗りの全館オープンで、売り場面積は従来の1.6倍の6万4000平方メートルと、大阪キタで最大となった。
JR西日本の貨物駅再開発プロジェクトも進行中
JR大阪三越伊勢丹は売り場面積の拡大競争にはこだわらない方針だが、老舗である三越伊勢丹の大阪初進出のインパクトは大きく、ライバルの3百貨店は増床・改装で対抗。2012年に阪急百貨店梅田本店が増床工事を終えると、大丸梅田店を抜き、トップに躍り出る。
しかし、大阪キタの百貨店のサバイバル競争は「総崩れ」の懸念も指摘されている。商都・大阪といえども、百貨店業界の斜陽化は否めず、東日本大震災の自粛ムードが関西の消費低迷に拍車をかける可能性もある。
加えて、JR大阪駅周辺ではJR西日本の貨物駅跡地を再開発する「うめきた」(梅田北ヤード)と呼ばれるプロジェクトが進行中。三菱地所など12社が1期区域(約7ヘクタール)に4棟の高層ビルを建設中で、愛称は「グランフロント大阪」に決まった。しかし、大阪市内はオフィスビルの供給過多が続き、空室率は首都圏に比べ高止まりが続いている。百貨店の増床に加え、このまま再開発ブームで高層ビルや商業施設の建設ラッシュが続けば、入居テナントが埋まらず、再開発があだとなる可能性も否定できない。