南北9キロの町のほとんどが太平洋に面する茨城県大洗町は、東日本大震災の発生当日、5波の津波に襲われた。本来、海岸沿いの町にとって波は貴重な観光資源の一つ。毎年夏場になるとサーフィンやシーカヤックなどを楽しむ人たちで賑わう町に、波は7名の死傷者をもたらし、住家屋1,400件以上に被害を及ぼした。サーファーや釣り愛好家を受け入れるはずのビーチには、がれき処理の作業者と建設機械が集う。海岸から200メートルほどの場所にある町内最大級のアウトレット施設も40~50センチメートルほど浸水し、営業休止に追い込まれた。地割れが残る場所も少なくない。
しかし、今年のゴールデンウィークもこの町の活気は絶えていない。写真は上記アウトレット施設に隣接する広場の光景。倒壊したままのフェンスが震災の深刻さを物語るが、大半の遊戯具は安全性が確認され、列をなす子どもたちを迎えている。奇妙だが微笑ましいコントラスト。付近の駐車場に「練馬」「品川」などのナンバープレートが見られることから、東京都内に住む子どもたちもいそうだ。広場から北に2キロメートルほどの位置にある大洗海岸にも人が絶えず、県関係者によると、道路の混雑状況は例年と変わっていないという。
政府が設置した「東日本復興構想会議」には東北3県の知事が並ぶ一方、茨城県知事の姿はない。だが、20を超える命が失われ、11万件を超える住宅被害が発生し、農産物の風評被害を受けてきたこの県の苦労もまた、忘れてはならない。その状況下で茨城県では福島県からの避難者322名(5月5日現在)を受け入れている。写真と同様、被災者でありながら支援者というコントラストのなかで、茨城県の存在により注目していく必要がありそうだ。
間中健介(NPO法人小児がん治療開発サポート 理事)
間中健介
1975年生まれ。中央大学ビジネススクール3期生。米系コンサルティング会社スタッフ、衆議院議員秘書、2005年「愛・地球博(愛知万博)」広報スタッフ、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス6%」運営事務局勤務などを経て、NPO法人小児がん治療開発サポートの運営に参画。
URL http://www.nposuccess.jp/