東日本大震災で失業した人や、内定を取り消された人を支援する企業の動きが相次いでいる。被災地から勤務地が遠い場合は求人と求職がかみ合わないケースも一部であるが、人手不足の企業も多く、各社はできるだけ雇用機会の拡大に取り組もうとしている。
広島県福山市に本社を置く、運送業大手の福山通運は、震災発生後に失業した人を約300人、トラック運転手などとして、正社員採用する計画を立てた。
避難所でも被災地採用枠の求人情報を掲示
勤務地は関東から関西にかけてとなるが、赴任のための交通費や引っ越し費用、入社後3カ月の社宅料金も全額会社負担とかなりの優遇措置も設けている。ただ、勤務地の遠さから求職者の反応は今一つで、300人採用できるかどうかは微妙な情勢だという。
中国地方の企業では他にも、衣料品販売で岡山市に本社を置くクロスカンパニーも、今年度に予定している150人の正社員の中途採用者のうち、100人を東北地方で採用する。当面は神奈川や愛知、静岡などの店舗で働いてもらうことになるが、復興状況を見ながら東北地方の店舗での勤務ができるよう配慮する方針だ。
被災地での勤務をかなえる企業もある。LPガス卸大手の岩谷産業(大阪市)では、グループ会社のイワタニ東北(仙台市)が、石巻、気仙沼、陸前高田、釜石といった被災地から、ガス関連の資格を持つ人を対象に約50人を雇用する。ハローワークを通じて募集をかけ、既に20人近い内定者が出たという。
リクルートが運営する国内最大の転職情報サイト「リクナビNEXT」はネット上のほか、避難所でも被災地採用枠の求人情報を掲示。企業は支払う掲載料が無料ということもり、これまでに1万人を超える求人があり、企業側の旺盛な採用意欲を示した。
内定を取り消された人を中途で正社員採用
一方、宮城県は2011年4月19日、緊急雇用対策として最大4000人を県や市町村の臨時職員として採用すると発表した。がれきや漂流物の仕分け、避難所での子供の一時預かりや高齢者の見守り、被災地のパトロールなど、まさに臨時に発生している仕事を請け負う人を雇う方針だ。将来にわたる仕事ではないが、失業者にとっては当面の生活の一助にはなりそうだ。
内定を取り消された人のほか、今後の新卒採用でも被災地を支援する動きが活発だ。マツモトキヨシホールディングスは内定を取り消された人ら約200人を中途で正社員として採用する。クボタは岩手、宮城、福島3県の工業高校を中心に今後、数年間、10人程度の採用枠を設けることを発表した。
震災直後には2012年春採用予定者の採用活動を夏に延期するなどの形での救済が目立ったが、「東北枠」を設ける形の支援の輪は今後も広がりそうだ。