太陽光発電が災害時の非常用電源として、また電力不足を解消する「電力源」として脚光を浴びている。東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で2011年夏の電力供給が心配されるなか、今後は太陽光はじめ風力や水力、地熱などの自然エネルギーの注目が否応なく高まる。
その「一番手」として、身近に取り組める太陽光発電システムを導入する人が増えている。いざという時に自分で使う電力は自分で確保しようというわけだ。
小田原市「1か月で定員に達しそう」
太陽光発電システムは近年、CO2削減や地球温暖化防止の点から人気が高まっている。2009年11月には太陽光発電による余剰電力を電力会社が買い取る制度がスタート。これを機に、多くの自治体が導入を後押しするようになった。
そこに今回の大震災が発生。首都圏でも電力不足が予想されていて、「導入のペースは加速度的に上がる」(電機メーカー)とみている。
そうした中で、神奈川県小田原市が実施している住宅用太陽光発電の設置補助制度に、市民からの申し込みが相次いでいる。災害時の「自家発電」用に太陽光発電システムを設置しようというのだ。
小田原市環境政策課によると、2011年度の補助金は予算600万円で133件の申し込み枠を用意。4月1日から募集を開始し、4月27日時点で120件の申し込みがあった。
受け付けは先着順だが、10年度は100件の募集枠に対して定員に達したのは5月中旬で、それを上回るペース。「震災の影響もあって、例年より速いペースです。1か月で予算を使い切ってしまうかもしれません」と話している。
太陽光発電協会によると、住宅用太陽光発電システムの設置を支援している自治体は全国に655もある。
テレビ、冷蔵庫、携帯電話の充電…大丈夫
一方、シャープやパナソニック、京セラ、三菱電機といった太陽光発電システムの製造・販売メーカーにも、「(災害時の)自立運転(発電)に関する質問も含め、問い合わせは増えています」(シャープ)という。
今回の震災で、太陽光発電システムを搭載した住宅であれば、停電中でも自立運転コンセントに切り替えることで、緊急用の電源(1500ワットを上限)が確保でき、テレビやラジオ、冷蔵庫、携帯電話の充電などの容量の小さい電気機器が使えることがわかった。
普及とともに年々導入コストが下がってきたとはいえ、価格は200万円(3.5キロワットのシステム)前後のため、自治体の補助金などを有効活用したいというニーズは高まっている。
太陽発電協会によると、住宅用太陽光発電システムの市場規模は2010年に年間約20万戸が設置され、15年には年間43万戸が設置されると予測。20年には累積530万戸とみている。
また、矢野経済研究所では国内の太陽光発電システム市場は、自治体などの導入支援制度の拡充で、2013年度には1兆円市場に急拡大すると予測する。
成長性の高い、有望な市場であることは間違いない。