JR西が抜本的津波対策 運転士ら乗客を避難誘導

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   東日本大震災を教訓に、JR西日本は電車の津波対策を強化する。津波発生時に沿線で避難できるビルなどをあらかじめ決めておき、万一の際は運転士や車掌が乗客を避難誘導する試みで、大手鉄道会社が本格的に取り組むのは初めてという。

   東日本大震災では海岸沿線を走る列車が津波の被害を受けた。JR西管内では和歌山県の紀勢線や兵庫県の神戸線など海岸線を走る路線が多く、JR西は2009年に和歌山支社が津波対策を策定し、避難誘導訓練を行うなどしてきたが、今回の震災を受けて抜本的に避難誘導マニュアルを見直すことになった。

地震、津波情報を即座に把握し、運転士に指示を出す

   電車が走行中、大地震が発生し、津波の到来が予想される場合、JR西は電車の走行地点と津波到来時刻などの情報を即座に把握し、運転士に指示を出すという。自治体のハザードマップに基づき、津波の浸水予想地域を走行中の電車は、時間的余裕があれば冠水しない地点まで走行して停車。乗客を避難誘導する。津波の到来が近く、時間的余裕がない場合は、最寄りのビルや高台の公園などに乗客を避難誘導するという。

   JR西はこれまでも津波に備え、和歌山県内の紀勢線の危険個所を調査し、線路脇の架線柱に避難誘導標を設置するなどの対策を進めてきた。同線の沿線を歩くと、高台のレストランの駐車場などが避難場所に指定されており、線路脇の架線柱に「避難場所○○レストラン駐車場まで300m」などの避難誘導標が立っている。今回はこの対策をJR西の全線に広げようというもので、大阪府内や兵庫県内など高台のない都市部では、堅牢な鉄筋コンクリートのビルを避難場所に指定するという。具体的な避難場所の設置個所や選定方法などはこれから詰める。

走行中の電車の運転席で私物の携帯電話を操作

   せっかくの画期的な対策だが、走行中の電車の運転席で私物の携帯電話を操作していたことが発覚し、けちがついている。奈良電車区の男性運転士(27)を懲戒解雇したが、当初の「運転士がメールの着信に気付き確認した。(時間は)5~10秒ほど」との説明が、後で、実際には約1分間、ケータイでゲームをしていたことが判明するというお粗末さ。

   JR西といえば乗客106人が犠牲になった2005年の福地山線脱線事故の記憶が6年を経て、なお地元では生々しく残る。佐々木隆之社長は津波対策発表会見で「乗客の避難を確実にしたい」と力を込めた。実際に乗客を誘導する運転士ら現場の社員が信頼を得ない限り、せっかくの画期的な対策も、絵に描いたもちになりかねない。

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