福島第1原子力発電所の事故を受け、大手外食チェーンが店舗で使用する野菜に独自に放射性物質の検査を行っている。国より厳しい基準を設けてお客に安心してもらうとともに、風評被害で苦しむ農家を応援したいという思いもあるという。
モスフードサービスでは、野菜の年間取引量の約3割が福島、茨城、群馬、栃木県産。2011年3月下旬から、外部の民間機関に委託して4県産の野菜の検査を行っている。
国より厳しい基準で放射性物質検査
詳細は明らかにしていないが、国が定めた値よりも厳しい基準を設定しているという。週1回放射性物質の検査を実施、それとは別に毎日野菜から出る放射線量の測定も行っている。
同社は全国約3000の農家と契約していて、生野菜については全て国産を使用している。店舗では、店内に置かれた黒板にその日使われる野菜の生産者の名前を記し、「安全で美味しい生産者の顔の見える野菜」をPRしてきた。広報担当者は、
「念のため検査を行っています。これまで異常値は出ていません。出荷制限となった野菜は勿論使いませんが、風評被害で使わないというのは本意ではありません」
と話す。6月末から福島県産のトマトが入ってくる予定で、他の産地に切り替えることも可能だが、引き続き契約を続ける方針だ。これまで契約してきた農家を応援したいという思いがあるからだという。
ゼンショーは自社の「中央分析センター」で検査
一方、牛丼チェーンの「すき家」を運営するゼンショーでも、神奈川県川崎市にある自社の「中央分析センター」で放射性物質の検査を行っている。
中央分析センターは元々、野菜の残留農薬などを検査していた。3月末から、漬け物に使われる北関東産の白菜、レタスの検査を行っていて、やはり国より厳しい基準を設けている。広報担当者は、
「まず、平常値と同じかどうか確認して、少しでも異常値が出れば専門機関に委託します。おかしな数値が出ても、自分達で検査していればすぐに止めることができますので、お客様も安心していただけると思います」
ただ、ネットではこうした動きについて「福島応援したいからモスバーガー行く」といった好意的な見方もある一方、「まだ不安だ」という人もいる。日本フードサービス協会は「日本は各国に比べても高い安全基準を設けています。流通しているものは安全ですし、外食ではそこから更に水で洗って茹でたりします。独自で検査しているところは、国より厳しい基準ですから、それをクリアしていれば問題ありません」と強調している。