首都圏のJR駅ホームなどに掲示されている、乗務員への「ツバかけ」行為の禁止を呼びかけるポスターが話題を集めている。駅員や関係者に話を聞くと、駆け込み乗車の間際にツバや暴言を吐く、酔った客が後を絶たないという。
――乗務員などへの「ツバかけ」行為は犯罪です。
「こんなポスター作らなければならないコトに驚く」
こういう文言を記したポスターの目撃が2011年2月ごろからツイッターを中心に話題になりはじめ、4月に入ってからも写真の投稿が相次いだ。JR山手線の池袋駅や品川駅、巣鴨駅、常磐線の通る北千住駅で見かけたという書き込みがある。
ポスターでは、オレンジ色のシャツ、青いジャケットを着た長髪の男が、車窓から顔を出す乗務員にむかって、唾をはきかけている。ホームにいる周囲の人たちは困惑の表情だ。キャッチコピーの下には「(ツバかけは)厳しく罰せられる、悪質な迷惑行為です。絶対におやめください」とあり、見かけた場合は駅係員や警察官に知らせてほしいと呼びかけている。
ネット上では「わざわざ啓発しなきゃいけない状況なのか」「犯罪とかの前に人としてあり得ないでしょ」「わざわざ呼び掛けなくても常識人ならしないだろ」「こんなポスター作らなければならないほどなコトに驚く」などと書き込まれ話題を集めた。
JR東日本によると、このポスターは首都圏にある管内の駅で2011年2月ごろから掲示している。ただし、掲示スペースの関係ですべての駅ではない。乗務員に対するツバかけ行為が頻繁に発生したことから、掲示がはじまったということだ。
ポスターのような迷惑行為について、J-CASTニュースが都内の駅係員に話を聞いたところ、ひとりは「駆け込み乗車する人が、扉の閉まる瞬間、暴言を吐く光景をよく見ます。ほとんどが夜、酔っている人が多い」。別の係員も「(ポスターのような光景は)多いですよ。車掌に対してツバをかけたり、暴言を吐いたり、ものを投げたり。酔っぱらった中年以上の人に見られる」と話してくれた。
私鉄でも暴力行為の件数が大幅増加
駅係員への暴力はここ数年、増加傾向にある。JR東日本八王子支社の発表(2011年4月20日)では、社員に対する暴力行為は2010年度に53件確認されており、3年連続で50件を超えた。そのうちの7割近く(36件)は19時以降の夜間に発生し、加害者の約7割は飲酒していたという。加害者の年齢別では多い順に、60歳代28%、50歳代21%、30歳代17%、40歳代15%だった。
豊田駅で起きた事例では、車内点検の際に寝ている客に声をかけたところ、暴言をはきかけられ、ホームに降車させられたあと顔面や後頭部を殴られた。全治5日の怪我だった。また、武蔵小金井駅では寝ている客を起こそうとしたら殴られ、八王子駅でも迷惑行為を注意したら殴られた。三鷹駅では客同士の仲裁に入ったところをやはり、殴られている。いずれも酔客だ。八王子支社では、警察直通通報装置を増やしたり、ガードマンによる巡回を強化したりして対応している。
日本民営鉄道協会の発表(2010年7月7日)でも、暴力行為の件数は2008年度が752件だったのに対し、2009年度には869件で大幅に増加している。暴力行為の多発を受けて2006年からは、同協会および大手民鉄16社、JR3社などが共同で暴力行為防止ポスターを駅構内や電車内などで掲出し、啓発を行ってきた。