逃げる投球でフルシーズンは乗り切れない
「真っすぐ(速球)で抑えるのは理想だが、今は打たれない変化球を投げたい」
これは現状を理解しているからで、その辺が「頭脳派投手」の神髄でもある。しかし、かわして逃げる投球でこのままシーズンを通過することは疑問。プロは一度対戦すると、投球内容を丸裸にしてしまう。
「要するにボールになる変化球を打者が空振りしたから勝てただけ」
こう指摘するのは斎藤の母校、早大野球部の長老。斎藤が大学1年の頃からアドバイスしてきた元プロ野球選手である。今後についてこう指摘する。
「今は打者が速球にタイミングを合わせているから変化球が有効になっている。しかし、あれだけ変化球が多いと、次は変化球のタイミングで待たれ、投球をじっと見られてしまうので、通用しなくなる。速球あっての変化球という原点のピッチングを斎藤は早く取り戻すことがシーズンを乗り切るカギ」
斎藤は頭脳を駆使しながらの投球をしばらく続けることになる。しかし、テクニックはパワーの前には必ずつぶされる。
現在はファンもマスコミも寛大に斎藤を見守っている。日本のありがたいところだ。米国は違う。野球をよく知っているから内容で判断、評価する。レッドソックスの松坂大輔が18勝をマークしたときなど、内容がひどかったのでさんざんな評価だった。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)