高橋洋一の民主党ウォッチ
復興構想会議「船頭多くして」 結局財務省のやりたい放題

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   のっけから私事にわたることで恐縮だが、私は東日本震災直後の2011年3月19日に「官愚の国」(祥伝社)を出した。大震災前に校正や印刷も終わっていたので、もはや中止することもできなかったのだ。もし、校正などがすんでいなかったら出版できなかっただろう。しかし、大震災直後にあって出版してもいいのだろうかという気持ちもあった。大震災という未曾有の事態には政府の存在は不可欠だからだ。

   実際震災直後、自衛隊や警察、消防、地方自治体の現場職員らは一生懸命に職務を遂行した。もっとも、私の官僚制分析は、いわゆるキャリア官僚を対象としており、現場職員を含んでいない。しかも現場職員の頑張りはわかっていたので、それは出版をためらった理由ではない。

復興構想会議ならぬ「増税」構想会議

   実は、「官愚の国」では、財務省の増税指向はきわめて強いことを書くというのが、大きな理由だった。これだけの大震災になったのだから、さすがに増税は引っ込めるだろう。財務省が増税志向を引っ込めると、何とも間抜けな本になってしまうところだった。

   ところが、何と財務省はこの震災の最中でも増税指向を失わなかったのだ。正直言って驚いた。

   先日の復興構想会議で、冒頭の五百旗頭真(いおきべまこと)議長の挨拶でいきなり増税発言がでてしまった。復興の議論の前に増税とは。増税だけは手回しがいい。復興構想会議に限らず役所の会議は「庶務権」で左右される。

   私の経験では、会議のメンバー数を二桁以上にすると、メンバー間の議論する時間が少なくなり、庶務をやっている役所の意向通りに進む。復興構想会議はメンバー数15名なので、役所のやりたい放題になる。その庶務をやっているのが佐々木豊成・内閣官房長官補、財務省出身者だ。その下には財務省からの職員が多くいる。彼らが会議の進行スケジュールを決め、検討内容をメンバーに「レク」する。メンバーの多くは洗脳され、役人通りに動く。その結果が、復興構想会議ならぬ「増税」構想会議だ。

東電の株主と債権者守ると国民負担が大きくなる

   実は、「官愚の国」では経産省のやりたい放題も書いた。東電の補償問題でも、やはり経産官僚が国民負担増加に向けて暗躍中だ。東電の福島原発事故での補償はいくらになるのかわからない。それにも関わらず補償問題の処理はどんどん検討されている。実際の避難民への対策より早く東電の補償問題が議論されることにも違和感があるが、さらに問題なのはその内容だ。

   補償は東電の問題なので、東電が負うべきだ。ただその額が巨額なので、政府も残りを負担せざるを得ない。となると、東電の負担が少ないと、その分国民負担が増えるという関係になる。

   資本市場のルールでは、東電の負担は株主、債権者、経営者、従業員になる。金額からいえば、前二者が大きい。ということは、東電の株主と債権者を守ると国民負担が大きくなるという構図だ。

   新聞で報道されている今の政府案は、東電を温存するという立場なので、国民負担が大きくなっている。それは、電気料金の値上げや増税で国民に跳ね返ってくるだろう。

   こんな時期に、復興財源での増税、東電問題での電気料金値上げということで、財務省や経産省がやりたい放題になっている。

   復興財源では、前回(「日銀引受は禁じ手」の虚妄 実は「毎年行われている」4月14日配信)で指摘した日銀引受の他に、埋蔵金が国債整理基金や労働保険などに15兆円ある。

   埋蔵金を指摘すると恒常的な財源でないと財政当局は批判してきたが、1回きりの今回のような大震災の復興財源としてふさわしい。これまでとりすぎているのだから、国民に返していいだろう。東電問題でも、電力事業を継続して東電を解体すれば、国民負担は少なくなる。

   官愚の国はこりごりだ。

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