津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市の昔話がネット上で話題だ。津波をテーマにした「みちびき地蔵」というもので、海外サイトでも紹介された。しかもこの地蔵は実在するという。
1975年から90年代中頃まで主にTBS系列で放送されたアニメ「まんが日本昔ばなし」の中に「みちびき地蔵」という話がある。気仙沼湾にある離島、大島に伝わる民話だという。
津波前日、大勢の村人の魂が地蔵にお祈り
昔、母親と幼い子どもが農作業の帰り、地蔵の近くを通りかかった。この地蔵は「みちびき地蔵」と呼ばれ、翌日亡くなる人の魂が天国に導いて貰うため、挨拶に来ると言われていた。この日は子どもから年寄りまで大勢の人々の魂がお祈りをしていた。
母親は、「一体なぜこんな大勢…」と怪訝に思うが、家に帰って夫に話しても「そんな馬鹿なことがあるものか」と相手にされない。しかし翌日、浜辺で何十年か振りに遠くまで潮が引き、普段なら潮が満ちてくる時間になっても、全く満ちなかった。すると突然津波がやってきて浜辺にいた村人達を飲み込んでしまう。親子は高いところに逃げ無事だったが、61人の村人が亡くなったという。話は
「今もこのお地蔵様はみちびき地蔵と呼ばれて、人々は花やお線香を絶やさないそうです」
と結ばれている。
テレビでは1977年に放送されたこの動画が、震災から2日後の2011年3月13日、YouTubeにアップされ、大きな反響を呼んだ。
今回の大津波で果たして無事だったか
4月27 日現在までに約28万回再生された。「昔も同じことがあったんだなあ」「いま改めて見ると怖い話ですね」といったコメントも多数寄せられている。また、このアニメでは津波発生前に地震の描写がないことから「震源地はチリとか外国か」といったものもあった。海外サイトでも「The guiding jizo」と紹介され、「この話が実話をベースにしているのは間違いありません。歴史は繰り返されます」などとブログでコメントされている。
この地域の民話に詳しいリアス・アーク美術館(気仙沼市)の川島秀一副館長によると、みちびき地蔵と呼ばれる地蔵が大島に実在する。いつごろから「みちびき地蔵」と呼ばれたかは不明だが、1770年代に祀られた記録があり、昭和の時代にお堂が建て替えられたという。
「その(日本昔ばなしの)話は知りませんでしたが、こんな話もあります。昔、大きな地震があったとき、逃げ惑う人々に指示を出した人がいました。この人の後を付いていって助かった人々が、お礼をしようと思って探しましたが、結局見つからず『あの人はお地蔵様だったんだ』と言われたそうです」
今回の津波でみちびき地蔵がどうなったかは不明だが、「丘の上にあるのできっと無事だと思うのですが…。今度見てこようと思います」と話していた。
市によると、大島にいる約3200人の島民のうち現在も約200人が避難生活を送っている。まだ多くの地域で断水が続くなど、ライフラインの復旧が急がれている。