東京のベッドタウンとして通勤に便利のうえ、東京ディズニーリゾートと「湾岸エリア」というブランドもあり、「住みたい街」の上位にランクされる千葉県浦安市。2011年の住宅地価ではJR新浦安駅の南側で上昇する地点が目立つなど、東日本大震災の前はちょっとしたミニバブルの様相にあった。
ところが、震災による液状化被害に見舞われ、電気やガス、水道といったライフラインが止まり、その復旧に1か月以上も費やしたことで評判を下げている。
3万7000世帯が被災する
震災による液状化現象によって、浦安市は3万7000世帯もの被災世帯を抱えた。震災から1か月がすぎたが、止まっていたライフラインは2011年4月15日に、被害がひどかった新浦安エリアでも下水道が復旧し、ようやくトイレや風呂が使えるようになった。
しかし、「一度に大量の水を流したりすると逆流したり、溢れ出てきたりするので注意を呼びかけているところ」(浦安市)と、まだ完全とはいえない状況にある。
市内の道路も通行止めはないが、歪んでいたりガタついていたりしているところが残る。
建物の被害状況は、埋立地に建てられた8999棟について家屋被害認定調査を行ったところ、全壊8戸、半壊33戸、一部損壊が7930戸(罹災証明書の発行ベース)あった。このうち、「一部損壊」と判定された家屋は災害支援金がもらえない。
浦安市は4月25日、千葉県に対して判定基準を見直し、一部損壊の家屋でも災害支援金が受け取れるよう再考を求める申し入れ書を提出した。申し入れが認められなければ、住宅ローンを抱えながら、修繕費用を負担しなければならない状況に陥る人が出てくることになる。暮らしの立て直しには、かなりの時間がかかりそうだ。
物件を売買する状態ではない
「住みたい街」が一変、人気を落とした理由は、ライフラインの確保に時間がかかったためだ。同じ湾岸エリアでも豊洲や有明、東雲周辺は復旧が比較的早かったが、浦安周辺は取り残された。
それが影響して、ここ数年人気が高まっている分譲マンションも「いまはマーケットがフリーズした状態。物件を売買する状態になく、新築物件はすべて止まってしまっています」(不動産調査の東京カンテイ市場調査部の上席研究員・中山登志朗氏)と話し、今後の販売の見通しは不透明という。
一部の賃貸マンションでは建物にヒビが入るなどの損傷やライフラインが止まったことで、企業の寮や社宅に住んでいる人などが内陸部に引っ越す動きがある。
浦安市は「人口の流入をみる限りでは動きはありませんが、(避難などで市から出て行った人については)把握しきれていないところはあります」と話す。地元の不動産業者によると、「引っ越したい」という声もあるそうだ。
前出の中山氏は「浦安人気に陰りがでるのは仕方のないところ。ただ、今後デベロッパーはライフラインの確保など、いざという時の災害対応力に力を入れていくことになるので、浦安の凋落が長期化するとは思えません」とみている。