「東京は火災リスクが非常に高い」
首都圏で直下型の地震が起きた場合のシミュレーションもある。2005年に中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会が発表した「首都直下地震の被害想定」によると、震源地を東京湾北部するマグニチュード7.3(冬夕方18時)とした場合、死者1万1000人、負傷者21万人と試算されている。揺れによる建物全壊が15万棟、火災による消失は65万棟。首都の経済中枢機能や交通ネットワーク機能への支障が出て、経済被害は実に約112兆円にものぼるという。
防災に詳しい東京大学・廣井悠助教(都市工学専攻)は「東京は火災リスクが非常に高いと言える。震災が起きたときには、消防が不足する可能性も考えられる。地震で出火点が多くなると、消防車が現場に向かえないケースも出る」と言う。ちなみに、火災については初期消火が非常に大切で、火が燃え盛った場合は逃げるしかない。
また、シミュレーションではM7.3の地震が前提だが、東日本大震災を踏まえ、M9.0レベルの地震を想定した方がいいのではないか。これについて廣井氏は、次のように指摘する。
「シミュレーションには2つの観点――地震の規模や場所の想定、そして地震が起きた後にどういう被害が起こるかの想定――がある。規模等についてはたしかに再考の余地があるかもしれないが、東京で大地震が起きた場合の被害は想定されているだけでも大きな数値。大事なのは、どうやって想定されている被害を最小化させるか(リスクコントロール)、もう一つは想定以上の災害が起きた場合にどう対応するかだ。たとえば、地震で行政が機能不全に陥ったとしたら、その時にどうするのか。現段階で想定される被害以上のことが起きた場合を考えておく余地はあるだろう」