ブレーンの小野善康氏の影響なのか
民主党執行部は「償還財源は税以外のものはない」(18日、岡田克也幹事長)との立場で、菅首相を含め、消費税を本命視している。玄葉光一郎国家戦略相(党政調会長)は消費税を被災者に還付するのは実務的に難しいとの議論について「被災地への配慮は技術的に可能」(19日)と踏み込んだ。領収書による実費還付は事務的に不可能というのが常識だが、年収の一定割合を消費税額とみなして還付するといった手法が念頭にあるとみられる。
政権サイド、特に菅首相が消費税に軸足を置くのは、ブレーンの小野善康・内閣府社会経済総合研究所長の影響との指摘がある。小野氏は新聞のコラムや日本記者クラブでの講演などで、日本経済が大変な時に「いつ返せるか分からない国債発行は一番危ない」と指摘し、消費税アップを主張。このようなときの増税は「すぐに復興のために使われ、すべて需要創出になる」と、増税=経済にマイナスとの議論を批判している。
こうした経済理論もさることながら、菅首相には、1次補正予算案で基礎年金の国庫負担分を転用した経緯も踏まえ、6月をメドに結論を出すとしてきた「税と社会保障の一体改革」に絡める思惑も見え隠れする。こうした事情もあって、民主党内でも小沢一郎元代表のグループを中心に増税反対論が根強い。
また、野党も「復興名目の政権延命策」との警戒心を抱く。ただ、野党側は「消費税は社会保障に充当すべきだ」(19日、石原伸晃・自民党幹事長)、「直ちに消費税をあてることには賛同しがたい」(同、山口那津男・公明党代表)とけん制するものの、所得税増税などの明確な対案があるわけではなく、決め手を欠く。