福島第1原子力発電所の事故で原発の安全性に疑念が高まるなか、原発を見学したいと関心を寄せる人が増えているようだ。そもそも原発はどう運営されているのか、自分の目で確かめたいのだろう。
国内の原発では、併設する広報用の施設で原子力発電の仕組みを詳しく紹介する一方、発電所の建物へは入場を禁じている。
島根県見学ツアーに定員の倍の応募
島根県では年4回、松江市内にある島根原発の見学会を実施している。福島第1原発の事故以降では初となる見学会は5月19日に行われるが、参加者の募集で「異変」が起きた。島根県原子力安全対策室に聞くと、定員50人に対して「100人の応募がありました。ここまで多いのは初めてです」と驚く。
見学会では、中国電力が運営する「原子力館」で島根原発の概要の説明を受けた後に発電所へ赴く。敷地内に入って、建設中の「3号機」や運転中の発電所の建物を外から眺めることはできるのだが、建物の中には入れない。「以前は中の見学も許可されていたのですが、米国の同時多発テロ以降、セキュリティー上中止になったのです」と、安全対策室は説明する。
他の原発でも状況は同じだ。例えば福井県の美浜原発には、「美浜原子力PRセンター」が隣接しており、原子炉など各種設備や装置の25分の1の模型に触れたり、放射線量を計測する装置を使ったりして原子力発電のイロハを学べる。 その一方で発電所内部の見学は、「国際テロ情勢を踏まえた警備上の理由」に受け付けていないとウェブサイトに書かれていた。
柏崎刈羽原発、以前は構内見学も可能だった
静岡県にある浜岡原発では「一般の人は、発電所の中に入れないことになっています」(中部電力広報)という。佐賀県の玄海原発も、「テロ対策」を盾に原発の建物への立ち入りを禁止しているという。
新潟県の柏崎刈羽原発の場合は、最近まで一般客も構内の立ち入りが許されていた。ウェブサイトには、事前に申し込めば2時間程度の見学が可能とあるので、個人でも比較的簡単に応募できたようだ。しかし柏崎刈羽原発に問い合わせると、「東日本大震災の影響で3月中旬以降、構内の見学は中止しています」と話した。同所を管轄する東京電力の社員が案内役を務めていたが、現在は福島第1原発の事故対応で現地に「応援」に行っており、見学者に対応できる状態でないことが中止の主な理由のようだ。今のところ、構内見学の再開は未定だと説明している。