東京電力の福島第1原発の事故で、東北や関東地方の一部の農作物が出荷制限され、風評被害が広がる中、全国各地で東北や関東地方の農家を支援する動きが広がっている。
企業の間では、石油元売り大手のJXホールディングス(HD)、大手農機具メーカーのクボタ、大手化学メーカーの住友化学などが社員食堂で福島県産や茨城県産などの野菜を購入。社員向けに特別メニューの提供を始めた。
東北・関東4県の農産物を使った献立を社員食堂で提供
風評被害を受けた産地の野菜を購入する動きは、東京・霞が関の厚生労働省と総務省の職員食堂や国会の参議院議員食堂、自民党本部などでも始まっているが、民間企業が支援に乗り出すのは珍しい。官民を挙げた幅広い農家支援の輪が広がっている。
野菜の出荷制限や風評被害をめぐっては、全国農業協同組合中央会(JA全中)の茂木守会長らが「原発周辺の農家は収入が途絶え、生活の維持すら困難になっている」と、文書で東電に抗議。被災農家へ速やかな補償を求めるJA全中に対して、東電は「できる限りの対応をしたい」と述べるだけで、具体的な補償交渉は進展していない。東電が2011年4月17日、原発事故の収束に「6~9カ月かかる」との見通しを示したことで、農産物に与える影響は長期化が予想されている。
全国各地の百貨店やスーパーマーケットなどでも福島県産や茨城県産の野菜を特売する「復興フェア」が行われているが、大企業の社員食堂の「支援」は大きなパワーとなりそうだ。
クボタは福島県や茨城県など東北・関東4県の農産物を使った献立を大阪市浪速区の本社をはじめ、全国の社員食堂13カ所で提供する。同社の社員食堂は全国で1日約1万人が利用するというから、貢献度は大きい。社員食堂で利用するコメや野菜を被災地の農協を介して一括購入。十分な数量を確保できれば、風評被害前の実勢価格で社員向けに即売も行う。当面は5月末までの予定だが、風評被害が長引けば延長も検討するという。