引き波が来ると海面が取水口より低くなる危険
吉井 過去の地震では、鉄塔が倒壊しました。今回の地震でも倒壊しています。これは、原発を冷やす外部電源が使えないということ。以前から問題意識を持っていました。
外部電源が使えなくなった際には、内部電源と呼ばれるディーゼル発電機が作動することになっているのですが、これも破損のリスクがあります。通常の検査でも、油漏れなどの問題が結構あります。ディーゼル発電機がダメになったり、バッテリーがショートしたり。回復したとしてもバッテリーは7~8時間しかもちません。このように、内部電源も外部電源も損なわれる可能性を、ずっと指摘してきたんです。
10年5月の衆院経済産業委員会では、内部電源も外部電源も失われた時に機器冷却系が働かなくなり、まさに今回起こったような炉心溶融が起こるリスクを指摘していました。
――津波についてはいかがでしょうか。
吉井 1896年の明治三陸地震では、「押し波」が38メートルにも達しました。津波があると、かなり大きな押し波が来る。これは誰でも知っていることです。意外と知られていないのが「引き波」です。1950年のチリ津波の時には、24時間後に、最初は引き波、それから押し波が来ました。引き波では、沖合300メートルぐらいまで陸地に変わってしまうことがあります。
原発では、冷却のための海水を取り入れる取水口を水面から4~6メートル下に設置しているのですが、引き波が来ると海面が取水口より低くなってしまう。いくらポンプを回しても、海水を取り入れることができず、冷やすことができなくなります。
この押し波と引き波の問題については、05年に質問主意書を出しましたし、06年3月には衆院予算委員会でも取り上げています。「何か起こった時の対策を取らないと大変だ」と、ずっと訴えてきたのですが、政府は「いやぁ、日本の原発は大丈夫なんです」一点張りだ。