東日本大震災で不要不急の消費が抑制され、小売り各社の営業にも少なからず影響を与えている。ただ、食品や日用品などはむしろ旺盛な需要に供給が追いつかない状態が続いたのも確か。
コンビニエンスストアやスーパーなど生活必需品を扱う業態の堅調さは今後も続く見込みで、先ごろ発表された流通各社の決算発表も、必ずしも土砂降りというわけではない。
セブン&アイやイオンも2月期は増収増益見通し
例えばコンビニ業界。大震災直後は消費者の「買いだめ」の動きもあり、首都圏の店舗では商品棚がガランとしている光景が当たり前だった。このため、2011年3月は各社とも前年同月と比べて相当な増収となった模様だ。2012年2月期の業績予想も悪くない。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクス、ミニストップの大手5社は、2~6%程度と大幅ではないものの、すべて増収を予想する。
営業利益で見ても、サークルKサンクスが0.2%マイナスとわずかな減益になる以外は、4社が1~5%程度の増益を予想している。ローソンの新浪剛史社長は「(足元の状況は)デザートや弁当などを中心に販売が堅調だ」と指摘している。
コンビニやスーパーからショッピングモールなどまで含む「総合小売り2強」のセブン&アイ・ホールディングス、イオンも、2012年2月期の業績予想は営業利益ベースで増収増益だ。セブン&アイの村田紀敏社長は「個人消費へのインパクトはあまり大きくない」と話している。イオンの岡田元也社長も「震災の影響はプラスマイナスゼロ」と指摘。両トップとも、3、4月の販売が悪くないほか、年度後半には復興需要も見込まれることから、今期の業績に震災が与えるマイナスの影響は小さいと見る。
厳しい状況が続くのは百貨店
ただ、そうした小売業界の中でも厳しい状況が続くのは百貨店だ。このほど出そろった大手3社の2012年2月期の業績予想はいずれも営業利益ベースで減収減益だ。全国百貨店売上高が2010年10月に32カ月ぶりに前年同月を上回ったのに続き、11年2月にも前年超えを果たし、長いトンネルにも底打ち感が見え始めた矢先。巨大地震と東京電力の福島第1原発事故の衝撃は大きかったようだ。
大丸、松坂屋を展開するJ・フロントリテイリングの奥田務会長は「原発事故による不安などで消費者心理がかなり悪化する」と決算発表会見で述べた。高島屋の鈴木弘治社長も「関東を中心に消費者心理が冷え込む」ことを懸念する。
3月期決算の三越伊勢丹ホールディングスは2012年3月期の業績予想をまだ出していないが、最近存在感を高めていた中国人など外国人観光客が原発事故の影響で急減していることもあり、業界では減収減益は避けられないと見られている。
とはいえ、そごうと西武を含むセブン&アイは、百貨店部門の不調を飲み込んで増収増益を見込む。全体としては「足元の消費は弱くない」(セブン&アイの村田社長)との見方からだ。最近では、「復興のために過度の自粛を避けようという」というムードもかなり盛り返しつつあり、案外、今後の消費は底堅いのかもしれない。