厳しい状況が続くのは百貨店
ただ、そうした小売業界の中でも厳しい状況が続くのは百貨店だ。このほど出そろった大手3社の2012年2月期の業績予想はいずれも営業利益ベースで減収減益だ。全国百貨店売上高が2010年10月に32カ月ぶりに前年同月を上回ったのに続き、11年2月にも前年超えを果たし、長いトンネルにも底打ち感が見え始めた矢先。巨大地震と東京電力の福島第1原発事故の衝撃は大きかったようだ。
大丸、松坂屋を展開するJ・フロントリテイリングの奥田務会長は「原発事故による不安などで消費者心理がかなり悪化する」と決算発表会見で述べた。高島屋の鈴木弘治社長も「関東を中心に消費者心理が冷え込む」ことを懸念する。
3月期決算の三越伊勢丹ホールディングスは2012年3月期の業績予想をまだ出していないが、最近存在感を高めていた中国人など外国人観光客が原発事故の影響で急減していることもあり、業界では減収減益は避けられないと見られている。
とはいえ、そごうと西武を含むセブン&アイは、百貨店部門の不調を飲み込んで増収増益を見込む。全体としては「足元の消費は弱くない」(セブン&アイの村田社長)との見方からだ。最近では、「復興のために過度の自粛を避けようという」というムードもかなり盛り返しつつあり、案外、今後の消費は底堅いのかもしれない。