香港に本拠地を置く新興航空会社が、全ての客室乗務員(CA)にカンフーの訓練を義務づけることになった。その理由は、「酔ったりして暴れる乗客とのトラブルに対応するため」。カンフーの訓練を受けさせていることをアピールするCMも放送されている。
異例の訓練を導入したのは、2001年に設立された「香港航空」。香港と中国本土を結ぶ路線を多数運航しており、日本便も成田、関空、沖縄の3路線が開設されている。
ブルース・リーが駆使した伝統武術
香港航空の路線では、粗暴な乗客とのトラブルが1週間に3回のペースで発生。この対応策として、CAはカンフーを習うことが義務化された。CA以外に、地上職も希望すれば講座を受けられる。
トレーニングが始まったのは、広東省を中心に伝えられてきた詠春拳(えいしゅんけん)と呼ばれる伝統武術。歩幅を狭く、腕を短く使うのが特徴。接近戦に有利だとされ、ブルース・リーが駆使したことでも知られている。この「接近戦に有利」という点が、狭い機内で役立つと考えられた様子だ。
CMで制服姿のCAが「型」をいくつか披露
香港の老舗英語紙のサンデー・モーニングポストが2011年4月17日に伝えたところによると、わずか2週間ほど前にも、この技術が役立つ場面があった。北京から香港へのフライトで、酔った乗客が気分が悪くなった。この乗客は非常に大柄で、通常であれればCAは「お手上げ」だが、訓練のおかげでスムーズに対応することができたという。
同紙によると、
「フライトでは何が起こるか分からないので、詠春拳は速い技で適していると思う。自分の身を自分で守れるし、世界で詠春拳を学ぶ最初のCAになれて嬉しい」
と、CAの間の評判は上々のようだ。
香港航空も、この取り組みを積極的にPRしている。このほど中国語と英語で放送が始まったCMでは、制服姿のCAが詠春拳の「型」をいくつか披露。最後に「突き」の姿勢になったところで、
「詠春拳は香港航空の客室乗務員の基礎訓練のひとつです」
との字幕が現れる。