「政府も同罪」で東電だけに責任を押しつけにくい
政府には「弱み」がある。賠償は「東電が一義的な責任を負う」としているが、原子力損害賠償法は「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」が起きた場合、電力会社の賠償を免除し、政府が「必要な援助を行う」規定がある。東電が「想定外の津波」と力説するのは、これを意識しているのは間違いない。原子力安全・保安院など行政側も東電と一体となって原発建設を推進してきたが、その安全対策に穴があったのだから、「政府も同罪」で、東電だけに責任を押しつけにくい。
経済界も「東電救済」を切望した。経団連の米倉弘昌会長は4月11日の会見で、「国の全面支援は当然」と語り、奥正之全銀協会長(三井住友FG会長)も14日、「政府として力強く(東電支援を)約束して頂きたい」と促した。銀行、生保など金融界は株式、社債保有と融資のトリプルで東電との利害はズブズブの関係。株主名簿には第一生命、日本生命、三井住友銀、みずほコーポレート銀などが名を連ね、数百億円から1000億円超の評価損を被っている。前田建設などゼネコンなど株主は業種を越え分布する。
個人投資家も深刻だ。東電株の44%は個人所有で、安定配当に定評のある電力株は値上がり期待より、配当目当ての年金感覚で保有する高齢者も多い。年金運用で東電株が組み込まれていることもあり、「東電株を紙くずにするわけにはないかない」(証券筋)という事情がある。