歌手の鬼束ちひろさんの「変身」が目立つ。デビュー間もない頃の清楚な雰囲気とは打って変わって、ど派手で強烈なルックスになったのだ。発売されたばかりの自伝ではパニック障害や自殺未遂など、デビューからこれまでの壮絶な経験を告白している。
鬼束さんは2000年、20歳のときにデビュー。同年発売されたセカンドシングル「月光」が大ヒットし、一躍スターにのし上がった。
「大変ですよ、殴られたり」「もっと大変なことはいっぱいある」
2001年に発売されたファーストアルバムも大ヒットし、全てが順調と思われた。ところが、03年に声帯結節になったころから休業状態に。事務所を何度か移籍した後、07年に活動を再開し、途中休業を挟みながら現在に至っている。
2010年8月には、同棲中の男性に暴行を受け、全治1か月の重傷を負ったと報道され、再び話題となった。
そんな鬼束さんが2011年4月20日、ニューアルバム「剣と楓」を発売。19日には情報番組「やじうまテレビ!」(テレビ朝日系)に出演した。
デビュー当初はシンプルで清楚な印象の服装だったが、この日は、金色のアクセサリーに、黒いギラギラとした服、真っ赤な口紅に紫のアイシャドウと、全く別人だ。
暴行事件について「大変ですよ、殴られたり」とコメント。相手については「魅力的な男性でしたよ、ただ『手癖』が悪かったんじゃないかな」と語った。
「人生に道があるとしたら、ボコってなったところですよ」「もっと大変なことはいっぱいある」と終始意味深な語り口で、聞き手の男性アナウンサーも困惑気味だった。しかし20日に発売された鬼束さんの自伝的エッセイ集「月の破片」(幻冬舎)はもっと強烈だ。
観客の顔が悪魔に見え、マイク持つ手が震える
デビュー当時はスタイリストが用意する清楚な服装が「『超』がつくほど不満だった」。現在は派手な服が好きなようで、「とうとう気が狂ったんじゃねえか?」と思われるくらいのコーディネートが最高なのだという。
また、パニック障害を発症していたことも告白。02年の全国ツアーのとき、観客の顔が突然悪魔に見え、マイクを持つ手がガタガタと震えた。ライブはなんとかこなしたが、その後も数回同じことがあり、パニック障害だと分かった。そのツアー以来発作は出ていないものの、今でもステージに立つと不安になると書いている。
自殺未遂の経験もある。活動を休止していたころ、「ただもう、死にたくなった」ので、自宅で、ウイスキーと一緒に睡眠薬と安定剤を大量に飲んだ。ただ、死体が腐るのは嫌だったので、母親と知人に「私、もう死ぬから」とメールを送っていた。駆けつけた2人に起こされ病院に運ばれたという。
意識は朦朧としていたものの自力で歩けたくらいなので大事にはならなかったが、以来自殺願望はなくなったとし「これからの人生は死のうなんて考えずに、買えるだけのシャネルを買って生きてやる! 死にたいという欲求が、物欲とさらなる生命力にシフトした」と綴っている。
「月と破片」にはその他にも、マネージャーの車のフロントガラスを素足で蹴破ったり、小さいころ生きた金魚の目玉を食べたりといった仰天エピソードが満載だ。新作アルバム「剣と楓」も、以前の様な神秘的な楽曲はもちろん、新感覚のテクノポップ調の曲もあり、バラエティ豊かな面白い作品に仕上がっている。