東日本大震災の影響が、東京電力以外の電力会社にも及んでいる。「地元の理解を得られない」として、定期検査中の原発の運転再開がずれ込んでいるのだ。だが、運転再開がずれ込むと、電力需要がピークを迎える夏の電力供給に「黄信号」がともる形になる。
特に玄海原子力発電所(佐賀県)を抱える九州電力では、早々と延期を表明、計画停電の可能性すら口にした。
3月30日の会見では一転運転再開の意向表明
九電では玄海原発(佐賀県東松浦郡、1~4号機)と川内(せんだい)原発(鹿児島件薩摩川内市、1~2号機)の2か所、計6基の原発を稼働させており、玄海原発の2、3号機が定期検査中だ。
それぞれ3月下旬、4月上旬に検査を終えるはずだったのだが、3月24日になって、九電は「運転再開を当面延期する」と発表。全国の発電量に占める原発の割合は約3割なのに対して、九電は約4割と高めだ。このことから、真部社長は計画停電の可能性について問われ、「否定できない」と答えた。
ところが、3月30日の会見では一転。震災後に九電側が安全対策を強化し、国が4月中に審査を終える見通しになったことから、5月下旬に運転を再開する意向を示した。
九電の動向が、他地区に波及する可能性も
だが、それでも計画停電のリスクは残る。
同日九電が発表した11年度の電力供給計画によると、夏の最大電力需要は1669万キロワット。この時に九電が保有している原発6基が全て稼働すると仮定した場合、供給力は1978万キロワットだ。8%~10%程度が適切だとされる供給力の余力を示す「予備率」は18.5%で、比較的余裕がある。ただし、川内原発の1号機は5月から7月にかけて定期点検が予定されている。
さらに、福島第1原発の状況が悪化して玄海原発2、3号機の運転再開がさらに先送りになり、川内原発とあわせて計3基が使えなくなった場合、供給力は1728万キロワットにまで落ち込む見通しだ。予備率は3.5%で「綱渡り」状態に追い込まれる。仮に火力発電所への燃料供給が滞った場合、供給が需要に追いつかなくなり、計画停電という選択肢が再び浮上する可能性もある。
いったんは延期を表明した九電の動向が、他地区に波及する可能性も指摘されている。例えば、関西電力では美浜原発1号機(福井県美浜町)の定期点検を4月上旬に終了する計画だったが、運転再開が遅れる可能性がある。さらに、四国電力では4月末から2か月程度、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の定期点検を予定しているが、運転再開が夏に間に合わなくなる可能性もある。