東日本大震災の影響で日本への観光客が激減していることを受け、観光庁の溝畑宏長官が2011年4月20日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開き、「訪日外国人数回復に向けて努力したい」など訴えた。
政府は10年6月に閣議決定した成長戦略の中で「観光立国」をスローガンに掲げており、訪日外国人を2020年初めまでに2500万人、将来的には3000万人にまで増やすことを目指していた。
震災後は同73%減と壊滅状態
ところが、東日本大震災で状況は一変。日本政府観光局(JNTO)が4月14日に発表した3月の訪日外国人数(推計)は、前年同月比50.3%減の35万2800人で、過去最悪の落ち込み幅を記録した。震災前(3月1日~11日)と震災後(12日~31日)を比べると、震災前は前年同期比4%増の21万5000人だったのに対し、震災後は同73%減の13万7000人と、壊滅状態だ。
溝畑長官は冒頭、
「災害は起こったが、日本政府の『観光立国』については全く変更はない」
と強調。
「嘆いている時間はない。一刻も早く、観光産業を守り、日本の元気を世界にアピールするために、訪日外国人数回復に向けて努力したい」
と述べた。
具体的な施策としては、JNTOのウェブサイトを通じて、各地の放射線量、交通インフラの状況を4か国語で提供。「安心・安全」を訴えるほか、4月10日~11日には溝畑長官が中国・北京を訪問。政府当局者や現地メディアにトップセールスを行った。トップセールスでは、「情報だけではなく、思いを伝えることを重視している」という。
ただし、元々観光客が多かったアジアについては回復の兆しが見えており、4月16日には、震災後初めてとなる訪日ツアーが北海道と沖縄に到着している。
ヨーロッパについては復活は難しい
溝畑長官は、アジアについては
「韓国や台湾の観光業界にとって、日本は大きなマーケット。観光が活性化しないと(現地の)ビジネスにマイナスになる。香港のように、少し安くしてでも沖縄や北海道へのツアーを組むなど、復活に向けたモチベーションが高い」
と、客足の回復が始まったとみているものの、ヨーロッパについては、
「こういった状況について、こちら側の(プロモーションなどの)アクションがないと復活は難しいと認識している」
と厳しい見通しを示した。
また、東北地区の観光については、
「まずは、各県の要望をよく聞きたい。4月29日には、仙台でプロ野球の楽天戦、サッカーも開幕する。東北にとっては大きな意味がある。弘前では桜祭りも予定されている。被災地域が『特にこういうことを売り込みたい』という点を重点的に売り込みたい」
とした。福島第1原発事故をめぐり、海外からの不信感が広がっていることについては、
「そういうイメージを持たれているということは、政府の一員として申し訳ないと思う」
と陳謝。引き続き情報提供に力を入れたい考えだ。