経営破綻した武富士の再建を支援するスポンサー選定で、韓国の消費者金融大手、A&Pファイナンシャルが優先交渉権を取得した。選定をめぐっては、2011年3月末に行われた最終入札後、有力視されていた貸金業、Jトラストが「選考過程が不透明」と管財人を批判し、候補から降りる異例の展開となった。
スポンサー企業の再建方針や買収額は、利用者が武富士に対して過去に払い過ぎた利息の返還額にもかかわってくるだけに、選考理由や過程の透明化が求められそうだ。
Jトラストは、A&Pよりも有利な条件で応札?
武富士の支援企業を選ぶ最終入札には、米投資会社のTPGや投資ファンドのサーベラスも含め4社が参加。このうち、Jトラストは破綻した貸金業者ロプロの再建を手がけた実績があり、最有力とみられていた。
しかし、最終入札後に「米TPGが有力」との一部報道が流れるなど、情報は錯綜した。結局、A&Pの優先交渉権獲得が濃厚になったことを受け、Jトラストは4月8日、「選考過程における公平性・透明性が担保されていない可能性が非常に大きい」と選定からの撤退を発表。自社の応札額が310億円で、武富士の従業員700人を引き継ぐ提案をしたことも公表した。
スポンサー選定の入札に参加した企業がわざわざ撤退や応札額を公表するのは極めて異例。Jトラストは、A&Pよりも有利な条件で応札したにもかかわらず、最終選考から漏れたことを示唆し、抗議する狙いだったとみられる。
関係者によると、各社の応札額は「ドングリの背比べ」ではあったものの、A&PよりJトラストの方が高かったという。ただ、武富士の管財人は選定基準として、応札額や事業計画、弁済率の極大化を挙げるとともに、「応札額が高くても、事業再生の実現可能性がなければ選ばない」考えも明らかにしていた。
韓国で成功したビジネスモデルが日本で通用するか
A&Pは韓国で「ラッシュ・アンド・キャッシュ」のブランドで有人店舗を展開し、対面型の営業で貸し付けを増やしてきた。規制強化に伴う利益低下にあえぐ日本消費者金融大手各社が有人店舗を次々に閉鎖する中、リストラに出遅れた武富士は今も100店舗以上を持つ。管財人側は「A&Pのビジネスモデルは武富士の再生に生かせる」(関係者)と判断したようだ。
一方、Jトラストは、米ゴールドマン・サックス(GS)から資金支援を受ける計画だったが、業界ではGSの狙いは「武富士が持つ関西の不動産」(同)との見方がもっぱらだった。「武富士の事業再生に必要な資金を継続的に確保できるのか」(同)という懸念を払しょくできなかったことが、A&Pと明暗を分けた理由のようだ。
今後、武富士はA&Pのもとで事業を再生することになるが、40%台の高い貸付金利が認められている韓国で成功したA&Pのビジネスモデルが、規制強化が進む日本で通用するかは未知数だ。一方、過払い利息の返還請求を届け出た最大100万人の利用者への返還額は大幅カットされるとみられ、A&Pの事業計画が弁済率の極大化にどうつながるのか、管財人は納得のいく説明が求められそうだ。