東京電力福島第1発電所の事故をめぐり、海外メディアからは依然として厳しい見方が続いている。これ以上、汚染水などの放射性物質が拡散しないか警戒しているのはもちろん、自国経済への影響を懸念する声も出ている。
今回の事故をめぐって、最も海外に不信感を与えているのが、低レベル放射線汚染水を敷地外に投棄したことだ。すでに韓国、ロシア、中国などから懸念する声があがっており、国内からも海洋汚染防止条約(ロンドン条約)に違反しているとの指摘も出ている。
経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官ら政府高官5人が2011年4月19日に東京・有楽町の外国特派員協会で行った記者会見でも、汚染水についての質問が多く出た。
西山氏は、会見冒頭に英語で
「高レベル汚染水の流出を避けるために、非常に低いレベルの汚染水の放出を始めた。やむを得ない、必要な対応策のひとつだ。関係諸国にはご理解いただきたい」
と述べた。
「海に排出することは全く考えておりません」
これに対して、ニューヨーク・タイムズ紙の記者が、
「今後、低レベルまたは高レベルの汚染水を排出する予定はあるのか」
と質問。西山氏は、汚染水の浄化装置を設けることなどを理由に、
「海に排出することは全く考えておりません」
と断言した。
だが、この答えを信用した記者は必ずしも多くなかったようで、ドイツの新聞社の記者が「限られた処理施設、仮設タンクなどがまだ備わっていない段階で、どうしてそんなにはっきり言えるのか」と反論。西山氏は、
「確かに冷やすために入れた水が、外に漏れてきてしまうということで、この水は放射性物質に汚染されている。これは、タンクやメガフロート、バージ船といったものを先回りして用意することによって、外に出さないようにすることができると思う」
との見通しを示すにとどまった。
米紙、ハイテク産業については楽観視?
汚染水以外に、経済面の影響を懸念する声もある。USAトゥデー紙(電子版)は4月19日、「日本でのトラブルは米国の株式市場に悪影響を与えるか」と題した一問一答形式の記事を掲載。電子機器の多くが日本から供給されており、震災で米国市場に影響が及ぶ可能性について論じた記事だ。
もっとも、記事では、
「現時点では、大半のハイテク企業が生産計画を修正し、サプライチェーン(部品などへの供給網)への打撃に対応できているようだ」
と、日本については比較的楽観的な見通しを示している。だが、中国企業の売り上げが減少していることを理由に、「日本以外のニュースで、投資家は判断の見直しが必要になるかも知れない」としている。